創業96年の家庭用木製品の老舗メーカー、有限会社ウメザワ(名張市大屋戸)の4代目社長、梅澤尚史さん(43)は今年3月、先代の父・比呂之さん(74)から会社代表を引き継いだ。「ここ2年間、ダブル代表という形で父が強力にバックアップしてくれたおかげで、スムーズな承継ができた」と話す。 【自社製品を紹介する梅澤社長=名張市大屋戸】

 梅澤社長によると、創業当初は製糸業を営んでいたが、戦時中に軍服の木製ボタンを作り始めたのを機に、木工業に転換。戦後はボタン需要が無くなり、資産も底をついた。そこで家庭用木製品の製造を始めたが、これからという1959年、伊勢湾台風の影響で機械や材料など全てが流された。梅澤社長の祖父に当たる2代目の晃さんは、こうしたどん底から再建のため血のにじむような努力を重ね、今の会社の基礎を作り上げたという。

 その後、70年代の高度成長期、同社は小売業で大躍進したスーパー「ダイエー」から年間3億円もの台所用品の受注を獲得した。「日産3千枚、作ればすぐに売れる時代だった」と話すのは、先代の比呂之さん。しかし、ダイエーの経営危機とともに受注も無くなり、プラスチックまな板の台頭や価格競争もあって、再び経営状況が悪化した。

「時代に柔軟に対応」

 当時28歳で大手ホームセンターの店長を務めていた梅澤社長は、父から会社に呼び戻され、営業課長の立場で新製品開発と新販路の開拓に取り組んだ。今までのような「大量に物を作って安く売る」という考え方ではなく、「他社には無い付加価値商品を作る」ことに専念した。

 その結果、収納しやすく乾燥しやすい「スタンド付きまな板」、底を浮かせて衛生的に両面が使える「浮かせて使える木製まな板」「珪藻土のバスマットスノコ」など、次々にヒット商品を生み出す。販路は従来のホームセンターやスーパーから、付加価値をきちんと訴求できる雑誌の通販や生活協同組合のルートを開拓。現在、従業員はパートを含め24人で、2月以降は前年比1・5倍のペースで生産、販売も好調だ。

 比呂之さんは「私自身、先代から引き継いだ時も数年間、ダブル代表で社長業の経験を積んだので、次に引き継ぐ時も同じようにしたかった。創業以来、試練を乗り越えて今日がある。常に謙虚で、自らのネットワークを駆使して進んでほしい」とエールを送っている。

 梅澤社長は「会社の基盤を築いてくれた祖父と父に感謝し、事業内容を時代に柔軟に適応させ、会社を長く残していきたい」と決意を語った。

2020年6月27日付774号5面から

- Advertisement -