高さが大台町の宮川ダムに次ぐ県内2番目の84メートルになる伊賀市の川上ダム工事現場に向かって、堤体部分に使う骨材と呼ばれる大量の小石や砂利を載せた大型ダンプカー約30台が、同市のいがまち地区や大山田地区内の道路を年間約270日往復している。ダンプカーの運転席には工事用車両の運行管理をする7インチのタブレット端末を設置しており、交通安全対策に利用されている。【大山田小の通学路付近を走行するダンプカーと交通誘導員=伊賀市出後で】

 打設完了は2021年3月の予定で、コンクリートの材料に使う骨材の総量は約100万トン。同市川上の建設現場から約55キロ離れた亀山市の砕石工場など計5か所から調達している。運搬するダンプカーが完成までの間に計10万回往復する計算だ。

 ダンプカーは名阪国道の他、中瀬インター(伊賀市西明寺)から国道163号で同市真泥を経て広域農道の伊賀コリドールロードを南下する経路と、同市平田から下柘植インター(下柘植)まで北上する経路を通る。市内の通学路では西柘植、大山田、中瀬の3小学校と霊峰、大山田の2中学が計9地点で交わる。

 安全に走行するため、導入したのがGPS(全地球測位システム)とタブレット端末を用いた運行管理システム「VasMap(バスマップ)」だ。施工業者の大林・佐藤・日本国土特定建設工事共同企業体(JV)は地域の住民自治協議会や学校と意見交換を重ね、通学路や見通しの悪いカーブなど約40か所を注意ポイントに登録、安全対策を図っている。

運行管理システム「VasMap(バスマップ)」の端末

 バスマップはダンプカーが注意ポイントに差し掛かると「ここは信号のない交差点です」「間もなく通学路です」など自動音声で注意喚起し、同市伊勢路にあるJV事務所のモニターに車両の位置情報とともに速度超過や急ブレーキの有無などをリアルタイムに表示し、記録する。長時間の停止やルート逸脱など問題があれば、運行責任者がすかさず指示を出すことができる。

 同JVの戸田大三工事長(55)は「ダム建設で、地域住民の生活を妨げることがあってはならない。システムに加え、通学時刻の交通誘導員の配置もしている。細心の注意を払い、安全な運行に努めたい」、ドライバーの奥康二さん(48)は「端末から細かに情報が示され、安全運転への意識が一層増す。決して事故の無いよう心掛けたい」と話す。

 ダンプカーの経路と通学路が最多の4地点で交わる大山田小の西岡道啓校長は「毎月施工業者と学校行事の情報などを交わしている。工事開始前はどうなるか心配していたが、安全対策のためか特にトラブルは起きていない。これからも子どもたちの安全を守って頂きたい」と話した。

2020年1月25日付 764号 23面から

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