子延と平松、上阿波、富永、猿野の5区の村社として、伊賀街道の平松宿の北側に位置する葦神社は、927年にまとめられた「延喜式神名帳」にも記録がある古社。天正伊賀の乱(1581年)でほぼ焼損したが、後に再建され、明治後期には地区内の近隣社を合祀し、現在に至っている。【葦神社の拝殿前の石垣に立つ黒川宮司=伊賀市上阿波で】

 神社がある谷あいには、水辺の植物「アシ」が群生していたことから「芦谷」と呼ばれ、神社名は「芦」から「葦」に変わったとみられる。主な祭事は、5月5日の例大祭、7月中旬の祇園祭、11月3日の秋の例祭などがある。

 祇園祭ではかつて、伊賀地域各地で見られる「かんこ踊り」が行われていた。1921(大正10)年に奉納された「猿野の祇園踊り図絵馬」(市有形民俗文化財)には踊り子や笛吹き、太鼓打ちなどの姿が描かれ、往時の祭りを想起させる。

拝殿に掲示されている市有形民俗文化財の「猿野の祇園踊り図絵馬」=同

 2017年秋から宮司となった黒川昌吉さん(64)(同市下阿波)は、地元の阿波神社との兼務。小学校教員を定年退職する直前に前任の宮司が急逝したことを受け、「地元のために」と一念発起して修行を積んだ。日々の仕事は「掃除に始まり、掃除に終わる」。

 少子高齢化が進み、進学や就職などで地元を離れていく若い世代も少なくないが、黒川さんは「古里の景色や自然、文化、祭りなどを大切にし、いつでも帰ってこられる場所と思っていてほしい」と呼び掛けている。

 葦神社では年越しと三が日、参拝者に神酒の振る舞いがある。

2019年12月21日付 762号 12、13面から

- Advertisement -