俳聖・松尾芭蕉の「芭蕉翁故郷塚」がある伊賀市上野農人町に住む奥律子さん(82)は、短冊に書いた俳句を自宅周囲に並べた約100種類の花の鉢に飾り、道行く人の目を楽しませている。【短冊を添えた鉢が並ぶ庭にたたずむ奥さん夫妻】

鉢に添えた短冊

 30年ほど前、子どもの夏休みの宿題に合わせるように「扇風機 今は寂しく 部屋の隅」という句を作ったのが始まり。その後、NHKの通信講座で勉強し、初級、中級を卒業。14年前には「雨粒のままの紫陽花 活けにけり」の句でNHK学園俳句実作コンクールの秀作に選ばれた。3年前からは地域誌「伊賀百筆」に掲載する20句を投句している。

 日課は毎朝15分の散歩。「季節の移ろいとともに、雲の流れは毎日変わります。そこで浮かんだ1句を作り、夜に添削します」。新しい花の種類を図鑑で調べてラベルを作るため、寝るのが深夜1時ごろになることもあるという。

 作った句はある程度吟味した後、ペン習字初段の腕を生かして短冊にしたため、雰囲気の合いそうな花の鉢を選んで差し替えるなどしている。家の前を通り掛かる人には、季節の花とともに新しい俳句に出会うのも楽しみになっているようだ。

 花は玄関先の通路や庭などに並べ、全て種類が違う。1日2回の水やりは夫の保さん(85)が担当。退職後、伊賀流忍者博物館(同市上野丸之内)の館長を務めた保さんも花が好きで、70歳までは菊作りに凝ったそうだ。

 「毎朝花の手入れをしながら『今日も咲いてくれてありがとう』と声を掛けると、花から『ありがとう』と返事があります」と奥さん。「俳句を作ると四季の変化を感じ、自分も歳を取ったなと思います。それで『今朝も鏡に映る八十路顔』という句を作りました」と笑う。

 面白い新聞記事があると切り抜き、俳句のネタにする。「俳句は奥が深い。まだまだ勉強の毎日です」と話した。

2019年11月9日付 759号 2面から