日本の伝統楽器である尺八を広く理解してもらおうと、地域の中学校などで特別授業を行っている宇陀市榛原ひのき坂の木村正彦さん(72)=写真。9歳から父親の指導で始めたという尺八で、市内の高齢者施設でもボランティアで演奏している。

 奈良市出身で、IT企業に勤め、61歳で退職。退職後はサラリーマン時代に得たノウハウを生かし、67歳まではマイペースで仕事を続けた。それと並行し、趣味である家庭菜園、囲碁、尺八を楽しむ生活を始めた。

 6年前、ドイツ人の仲間から「空港の日本人職員が尺八を知らなかった」という話を聞き、ショックを受けた。「せめて自分が暮らす地域の子どもたちには知ってもらおう」と、榛原中学校の音楽教員に相談し、尺八の特別授業をすることになった。

 授業では楽器の説明をし、古典からジャズまで幅広く演奏するなどして生徒たちに興味を持ってもらうよう工夫。以来、市内や曽爾、御杖村の中学校を中心に特別授業を行った。

 4年前からは市内の高齢者施設での演奏を始め、現在では月10か所を訪問する。歌いたい歌、聴きたい曲、尺八ではどんなふうになるか興味がある曲など、利用者のリクエストに応じて演奏する。

 リクエストされても楽譜の準備ができていない時には“宿題”として持ち帰り、一般に使われている楽譜から尺八用の楽譜に作り替える。その時は頭の中が音であふれかえるが、これもまた楽しい時間だそう。

 今後は、他地域の学校も訪れたいという木村さん。高齢者施設での演奏は「とても楽しい。皆さんと一緒に遊んでいる気持ちです」とほほ笑んだ。

2019年7月13日付751号3面から