名張市内で唯一営業している銭湯「新町温泉」(同市新町)が毎月1回、第3金曜を入浴無料にしている。4代目の脇本俊彦さん(84)は「古き良き銭湯の良さを多くの人に知ってほしい」と話す。【湯加減を見る脇本さん=銭湯浴室で】

 創業は1873(明治6)年で、当時の屋号は新開湯。脇本さんは全面改装し現在名になった約60年前から父親の跡を継いだ。家風呂の無い家庭がまだ多かった1970年ごろまでは毎日100人を超す客でにぎわった。

銭湯の入り口に立つ脇本さん

 しかし、近年は生活様式の変化や大型店の進出などで客足が減少。かつて旧市街地に9軒の銭湯も現在は新町温泉だけになった。客数は多い日で30人から40人、雨の日は10人を下回ることもあるという。

 無料日を設けたのは、風呂が無い高齢者世帯や災害時に避難者が入浴する機会を確保する必要性などから、市が利用促進で銭湯を存続させるための支援事業。初回の5月17日は市内外から約150人が訪れた。

ボイラーにまきを足す脇本さん

 新町温泉の仕事は、近くの木材加工場から軽トラック2台分のまきを仕入れることに始まる。井戸水をくみ上げ、ボイラーに点火した午前11時以降は妻の道世さん(79)と交代でまきを足しながら、午後10時まで番台に立つ。脇本さんは「これを機に繰り返し足を運んでくれる人が増えたら。ボイラーが壊れない限り、体が動く限り、続けたい」と話す。

 営業時間は5月から10月までは午後5時から午後10時、11月から4月までは午後4時から午後9時まで。料金は通常中学生以上400円、小学生150円、未就学児70円。月曜定休。

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