「丹精込めて大きく育てたカボチャ。日焼けで皮が変色して出荷できない、そんな生産者の皆さまに、カボチャを『まもる』テープを作りました」。昨年10月に東京で開催された農業資材の展示会「第8回農業ワールド」に出展されたユニークな粘着テープ。リンゴや梨など6種類の専用テープが紹介されたが、3日間でホームセンターや農業関係者など約1500人が訪れ注目を浴びた。出品したのはクラフトテープや両面テープなどの粘着テープ専業メーカーの菊水テープ株式会社(本社・大阪府八尾市)。同社の国内生産を一手に担う名張工場(名張市八幡)を訪ね、開発、営業の担当者から話を聞いた。【事業について説明する(左から)葛城さん、門前さん、岡邉さん=名張市八幡で】

粘着テープひと筋70年

 1949年に八尾市で創業し、今年で創業70周年を迎える同社は、61年に段ボールケース梱包用のクラフトテープの量産に成功したのをきっかけに成長を遂げてきた。当時はガムテープ(水を付けて貼るテープ)が主流で、水を付けるための専用の器具が必要だった。同社が水なしで貼れるクラフトテープの量産に最初に成功したことで、テープメーカーとしての地位を確立することになった。

天然ゴムで作る

テープを一定の幅に切断する工程

 現在、従業員は全社で約150人、年商は53億円。85年に開設した名張工場には、そのうち約100人が働いている。平均年齢は42歳。生産品は主に工業用で、梱包資材を扱う会社や工場で使われている。クラフトテープ、養生用のマスキングテープ、両面テープ、ラインテープなど約100種類あり、材質も紙、布、ビニールなど多様だ。

 「当社の商品群の中でも特徴的なテープとして、道路上にラインを標示するラインテープがあります。このテープは短時間の施工が可能で、車のライトが当たると反射するようビーズが含まれており、他社もほとんど取り扱っていません。また、クラフトテープの粘着剤の原料には他社は合成ゴムを使っていますが、当社は天然ゴムを使用しています」と話すのは本社第三営業部の門前善範さん(41)。製造コストがかかり価格も割高になるという天然ゴムだが、本社営業本部貿易担当の葛城理一さん(39)は「極寒の地でも赤道直下でも、天然ゴムで作ったクラフトテープははがれにくいと現地で好評です」と話す。

ラインを流れるテープ

 名張工場では月産160万個のクラフトテープ量産ラインと多品種少量の生産ラインがあり、粘着剤の塗布、乾燥、切断などの工程をほぼ全自動で行っている。同工場の技術部研究開発課の岡邉佳久さん(34)は「ユーザーの要望に応えることはもちろん、コストを抑えるために、生産ロスを徹底的に無くすように心掛けています」と強調する。
 乾燥工程では溶剤が揮発するが、工場内でこれを全て回収し再利用、環境にも配慮した対応をしている。

農業用商品拡大

 「従来の包装業界、建築業界にとらわれず、新規の業界に乗り込んで菊水テープの知名度を上げたいとの思いから、まずは農業用の商品に取り組みました」と話す門前さん。

収穫前に右半分をテープで保護したカボチャ(提供写真)

 収穫前のカボチャは日焼けすると外観品質が低下して規格外となり、商品にならないため、従来は新聞紙やわらをかぶせていたそうだが、雨が降ると新聞紙はボロボロに、風が吹くとわらは飛んでしまうため生産者の悩みの種だった。そうした苦労談を鹿児島県の農家で聞き、収穫前の10日間ほどカボチャにテープを貼ることで日焼け防止になる「まもる」テープが誕生。この他リンゴや梨、ビニールハウスを「まもる」専用テープも商品化した。

5月22日から24日 「農業Week大阪」出展

 5月22日から24日まで大阪市の「インテックス大阪」で開かれる展示会「農業Week大阪」でこれらを出展する。「当社には新しいことにチャレンジさせてくれる気風があります」と口をそろえる3人。今後、農業向けの商品陣容を拡大するとともに、新しい業界を開拓していく方針だ。

2019年4月20日付746号11面から

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