伊賀市教育委員会は3月27日、文化財保護審議会から答申があった建造物1件と絵画2件の計3件を新たな市の指定文化財に決定したと発表した。そのうち旧上野市庁舎(上野丸之内)に対する指定は、答申から市教委定例会で議案提出されるまでに約2年の空白期間があり、放置とも取れる極めて異例な事務手続きだったことが明らかになった。【市の指定文化財に決まった伊賀市の旧上野市庁舎=同市上野丸之内】

 旧上野市庁舎は鉄筋コンクリート造り3階建て(5437平方メートル)で、建築家の坂倉準三氏の設計。1964年に完成した。市教委によると、答申から約2年の空白期間があったのは過去10年で1度もなく、理由については新市役所が完成する昨年12月まで市役所本庁舎として維持管理されてきたが、移転後は空き家状態で「貴重な建造物の保護・保存が図られなくなったから」としている。

 26日に開かれた市教委定例会の採決結果も異例だった。市教委によると、過去10年で全会一致はないケースは初めてで、賛成に挙手したのは笹原秀夫教育長と教育委員4人のうち2人。採決前には委員から「なぜこの時期の指定なのか」という質問があったという。

 27日の記者会見で、笹原教育長=写真右=は「移転して誰も使っていない状況では、せっかく良いものも劣化してしまう。夜によく傍を通るが、暗い中に建物が悲しんでいる感じがすごくする」と説明。旧上野市庁舎を巡って、保存改修を主張する岡本栄市長と過去に庁舎取り壊しを決議した市議会の対立を背景に、2年の空白期間は市議会への配慮だったのではないのかとの問いに、笹原教育長は「(配慮では)ない」と答えた。

 他の絵画2件は、昨年4月に市民から市に寄贈された「明治7年伊賀上野博覧会図」(縦82・7センチ、横114・7センチ)と、1854(嘉永7)年に発生した安政伊賀上野地震の上野城と城下町の被害状況を描いた2枚1組の「伊州御城下破崖損所絵図」(個人所蔵)。今回の3件を含め、市指定文化財は286件に上る。