腕や脚に切断障害のある人たちがプレーする「アンプティサッカー」のワールドカップ(W杯)で、伊賀市平野西町の会社員、中出一大さん(29)が日本代表帯同審判員として初めて世界の舞台に立った。8試合を裁き、最も高く評価された審判員に授与される「ベストレフェリー賞」を受賞した。【W杯でメキシコ対スペインの審判を務める中出さん(右から2人目)(提供写真)】

 少年サッカーの指導経験がある中出さんは、友人の父親がアンプティサッカーの選手だった縁で競技と出会い、2012年にその選手が立ち上げた関西のチームに指導者として加わった。
 選手たちと関わるなかで、引きこもりがちだった人が競技を通じて活力を取り戻す様子を目の当たりにすることがあった。以降、「より多くの人にこの競技の存在価値を知ってほしい」と、各地の学校で講演会を開くなど、普及活動にも尽力するようになった。
 競技では、「クラッチ」と呼ばれる杖を使ってプレーするが、故意にボールに触れる行為は反則とされる。激しいプレーの中で瞬時に見極めることは難しく、審判には高い技術が求められるという。中出さんがそんな審判員への道を歩み出したのは、「競技を普及させるためには、選手を増やすだけではなく、高いレベルの審判員が必要」という思いからだった。14年からは関西のチームを離れて日本アンプティサッカー協会の審判委員会の構成員に加わり、判定基準の統一や審判員の養成に取り組んでいる。
 10月27日から11月4日まで開かれたメキシコW杯には24か国が参加し、優勝はアンゴラ、準優勝はトルコだった。4回目の出場となった日本は初のベスト10入りを果たした。
 しかし、国内での知名度は低く、W杯への参加費用もスポンサーの協賛だけでは賄えず、1人当たり約5万円の自己負担が必要だったという。
 大会中、トルコ代表の帯同審判員とホテルで相部屋となり、「トルコではプロリーグが存在し、試合には何千人もの観客が詰めかける」という話を耳にした。「日本のアンプティサッカーを、トルコのように発展させたい」と中出さんは前を見据える。【ベストレフェリー賞のトロフィーを持つ中出さん(中央)と日本代表選手ら(提供写真)】

 〈アンプティサッカー〉 足を切断した6人のフィールドプレーヤー、腕を切断したゴールキーパーの計7人でチームを構成。1980年に米国で始まり、日本では2010年に最初のクラブチームが発足。現在、国内の競技人口は100人程度で、各地方に計9チームが存在する。

2018年12月8日付737号2面から

 

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