プロデューサーを目指して学ぶ伊賀市土橋の専門学校生、新居寛菜さん(19)。がんの治療中だった父・格さんの作品を収録した音楽CD「ひまわり畑と雷と君と」を一緒に制作した。完成を見届けた父は、宣告された余命より長い今年5月に永眠。55歳の生涯を閉じた。【完成したCDを手にする新居さん】

 格さんが胃がんと診断されたのは、新居さんが高校1年生だった4年前。手術をしたものの2年後に再発、勤めていた地元神社の神主を辞し、治療に専念することになった。

 格さんは昔からバンド活動や作詞作曲をするなど音楽好きで、新居さんが音楽を始めるきっかけになったのも格さんの影響だった。抗がん剤の治療を受けながら、再び曲を創作し始めた格さん。ギターを弾きながら、15曲くらい作詞作曲した。「それを楽しみに生きていた」と新居さんは振り返る。

 格さんの作る曲は「自然」や「恋愛」を題材にしたものが多い。海などで感じたことをギターで作曲し、作品はインターネットの動画配信サイトに投稿していた。

 東京で暮らす兄が帰省した時などは、同居する姉と新居さんを交えて音楽セッションが始まる。その様子を母親がほほ笑みながら聞いていたそうだ。

 入退院を繰り返すなか、昨秋に約2か月という余命宣告を受けた格さんは「最後に何か残したい。CDにしたい」と提案。新居さんも「うれしかった。絶対に作ろう」と制作に参加。格さんがオリジナル曲から選曲し、アレンジやボーカル、コーラスなどは新居さんが通っていた音楽学校の先輩後輩、先生にも手伝ってもらった。うち1曲は格さん自身が歌い、昨冬にレコーディングした。

父「夢に向かって頑張れ」

 CD用のジャケット写真は姉が撮った作品から新居さんが選び、格さんが決めた。こうして母の誕生日でもある今年4月14日に、3曲を収録したCD200枚をリリースした。【レコーディングに臨む格さん(提供写真)】

 実は思春期のころ、格さんとよくぶつかったという新居さん。音楽の道に進むと決めた時は心配から反対もされた。「病気があって、父と向き合うことも増え、心がつながった。それも大好きな音楽で」。

 CDが完成してから、入院が続く病室で、格さんは最後の最後まで「夢に向かって頑張りなさい」と背中を押してくれた。「今は父が好きと心から言える」と父への思いを胸に、夢に向かって踏み出した。

2018年9月22日付732号1面から