170907_11-1.jpg 創業87年を迎える三重交通株式会社(本社・津市)で、伊賀地域を営業エリアにする伊賀営業所(名張市西田原)。15年前に当時の名張と伊賀の営業所が統合され、現在の地に移った。路線や高速バスなどの乗合バス事業を担当する伊賀営業所と貸切バス事業を担当する伊賀観光営業所で構成される。事業の現状などについて、営業所を統括する所長の仲範和さん(49)と営業・総務係長の中川康司さん(48)の2人に聞いた。【伊賀地域と横浜・品川を結ぶ高速バスの車内は3列シート】

 新興住宅地への乗り入れ便や遠くは奈良県の曽爾方面まで運行しているローカル便など、生活の足として公共的な使命も担っているのが路線バスだ。

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 「少子高齢化などの影響もあり、利用客は減少傾向で、特に山間路線はぎりぎりの経営状況です。やむを得ず便数を減らすと、更に使い勝手が悪くなり、負の循環に陥ってしまいます。そこでダイヤの編成を工夫するなど、良質なサービスを維持するために試行錯誤を繰り返しています」と中川さん。【事業の現状を説明する所長の仲さん(右)と営業・総務係長の中川さん】
 今年3月からは、運転免許証の返納者が「運転経歴証明書」を提示すれば、本人と同伴者1人がそれぞれ半額になるシステムを導入するなど、路線バスの乗客増への取り組みに力を入れている。
 一方、高速バスは安定した利用客を維持しているという。毎日、夜9時25分に名張市役所を出発し、上野市駅、横浜バスセンターなどを経由して、翌朝6時15分に東京の品川バスセンターに着く東京行き夜行バスは、ビジネスやレジャー目的の乗客に好評だ(品川から名張行き夜行バスも運行)。最大の魅力は運賃。出発便により運賃は変動するが、大人片道が6700円から8550円で、これは新幹線利用運賃のほぼ半額だ。
 8月1日から一部ダイヤで新車両を導入している名古屋便(伊賀上野―名古屋・1日8便)は、車内の空気を高濃度イオンで除菌できる装置を備え、足をゆったり伸ばせるフットレストも採用している。
 伊賀市からは、京都、大阪行きの高速バスも運行。大阪便の車両には忍者を描き、「伊賀=忍者」をアピールし、時刻表や運賃表は英語、中国語、ハングル語表記も整備を進めている。「伊賀から東京、名古屋、大阪、京都方面への利便性を上げると同時に、外国人を含めて伊賀へ観光客を誘致したい」と仲さん。
 最近の定期バスの傾向として、各バス会社とも車高を低くし、ステップを無くしたバリアフリー志向の車両が主流に。同社では年4回の乗務員講習会で安全意識の向上を徹底するとともに、天災やテロ対策についてマニュアル化を図っている。
 また「クルグラット」という緊急地震速報の受信機が同社の全車両に搭載され、受信すると車内に音声が流れ、速やかに安全な場所に停車させるなど不測の事態に備えている。

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 営業所では現在約90台の車両を保有、乗務員は女性3人を含め約100人。うち60代のシニアドライバーが30人ほどいる。それでもドライバー不足が深刻だという。「男女を問わずやる気のあるドライバーを募集しています」と中川さん。【主に路線バスを担当する女性ドライバー】
 17年前まで、津管内で定期バスを運転していた中川さんは「当社の研修所で技能や知識を教えてくれるので、運転面での心配は無用です。乗客の方から『ありがとう』と言われるのが大きな喜び」と、ドライバー時代を振り返る。
 仲さんは「1年365日、バスの運行に休みはありません。交通事業ですので、何よりも安全が第一。安全へのハード、ソフトの投資は惜しまずに行っています。一旦安全が揺らげば、何もかも崩れてしまいますから」と、安全運行を強調した。
2017年8月26日付706号20面から
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