今回は伊賀市東部に位置する大山田の阿波地区の社寺を巡る約10・5キロです。(取材・山岡博輝)【1枚目の写真 阿波神社へ向かう道から左手奥に笠取山を望む】

【出発地の新大仏寺】

 鎌倉時代に重源上人が開いたと伝わり、四季折々の花でも知られる新大仏寺を、1月27日午前11時45分に出発。まずは東に向き、江戸時代に伊勢と伊賀を結ぶ重要路の宿場として栄えた平松宿へ。明治以降の鉄道開通を境に、宿場としての機能は薄れましたが、現在もその面影をとどめています。

【平松宿】

 正午のチャイムが平松宿に響き渡るなか、少し歩くと、杉林の中にたたずむ葦神社に到着。平安時代の大地震で近隣3社の社殿が損失したため、現在地に設けられたのが千年以上前と伝わっています。神社を出て間もなく、林の中からキジが飛び立っていき、突然の出来事に肝を冷やしました。

【杉林に囲まれた葦神社】
 
 亀山市方面から峠を越えてくる県道関大山田線に出て国道163号へ合流し、更に東へ。大型トラックなどもよく通るルートですが、幸いにも国道には歩道がありました(一部除く)。前日の雪が溶けずに残る日陰を通り、上阿波・元町の集落の一角にある慈眼寺観音堂に着くと、境内の地面は凍ったままでした。
 
 来た道を戻り、平松口バス停から細い道を南側に折れて丘を登ると、平松宿の東に位置する本願寺があります。本堂や鐘楼堂などを一見して国道に戻り、郵便局のある猿野の交差点から、国道南側の集落内の道を進みました。
 集落が途切れ、更に西へ進むと、正面に小さな鳥居が見えます。道路地図には表記が無かったものの、入口には「金比羅神社」の文字。80段ほどの狭い石段を上って参拝し、今度は田んぼの中を通る真っすぐな農道を南東方向へ。田んぼからシギのような鳥が飛び立ち、犬を連れた年配の夫妻とあいさつを交わしました。
 
 突き当たりの坂の上にある長泉寺を訪ねた後は、オオサンショウウオの生息を知らせる看板が立つ服部川を渡り、引き続き南西へ。小さな橋で再び川を渡ると、南の山側へ向かう農道に。正面には、笠取山(標高842メートル)にある航空自衛隊笠取山分屯基地の一角が間近に見えました。
 
【集落から外れた森の中にある阿波神社】
 
 枯れ草の伸び方や色が柴犬の背中のように見えるあぜ道を横目に、農道の突き当たりにある阿波神社に到着。拝殿は日陰に立っていて、手水もひときわ冷たく感じられました。ここから山際の農道を進み、下阿波の集落へ。これほどの快晴の下で歩いた記憶が無いほど澄み切った空でしたが、はく息は朝から変わらず白いまま……。
 
【服部川を渡り国道へ】
 
 服部川に架かる小橋を渡り、国道を渡るとバス停の少し奥には、鐘楼堂を備えた正覚寺があります。国道に戻り、看板を頼りに折れて急坂を上ると、丘の上には神憧寺。少し前に訪れた阿波神社などが木立の間から望めました。
 
 ここから数百メートルは国道を北東に進みますが、歩道は無く、通る車にビクビクしなくてはなりません。なんとか信号交差点までたどり着くと、進路を北へ。工場の裏手を進むと、再び地図に無い神社が。こちらは「金毘羅宮」とあり、赤い鳥居が確認できました。
 
【大山田温泉さるびの方面への道から富永方面を望む】
 
 アップダウンを繰り返した道から、東側の富永の集落に続く細い道へ。木立の中を抜けて下って行くと、風力発電用の風車2基が正面に見えます。最後は田んぼの中の直線を歩き、出発から約3時間後の午後3時、新大仏寺前に着きました。
 

 歩数計は約1万7700歩。車を運転してこの辺りを通ることは幾度もありましたが、国道から一歩入ると、もちろん地元の方には慣れ親しんだ風景なのですが、自分が今まで知らなかった景色が広がっている。そんな楽しさを実感したひとときでした。

 
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