【地酒造りに関わったまち協のスタッフの皆さん=伊賀市で】

 三重県伊賀市島ヶ原の地酒、純米大吟醸「しまがはら元頭(えとー)」が誕生した。地元の観菩提寺「正月堂」で1300年続く「修正会」で、大餅飾りを献上する頭屋衆の威勢の良い掛け声から命名された酒には、3年越しで取り組んできた島ヶ原地域まちづくり協議会の熱い思いが込められている。

 人口2000人弱の島ヶ原地区は米の産地だが、高齢化とともに農業の担い手も減っており、遊休農地が増えている。同まち協はこの遊休農地を活用し、地域活性化のための特産品を作ろうと立ち上がった。

 3年前、奈良県十津川村谷瀬地域が地元の酒蔵会社とタイアップして地域づくりに成功している事例を学んだ。そこでまち協が5000平方メートルの休耕地で酒米「神の穂」を栽培し、JA経由で同市上之庄の蔵元「大田酒造」に買い取ってもらい醸造した後、まち協が販売するという仕組みを考えた。

 また、同市の地域応援補助金を活用し昨年、事業を予算化し、本格的な酒米作りが始まった。

 酒米栽培を担当する地酒造り企画委員会の副委員長、増永秀美さん(72)は「米作りの経験はあるが、酒米は初めて。酒米の性質や作り方など全く分からなかったので収穫するまで不安の連続だった」と話す。

 昨年5月の田植えには、近隣小学校の児童13人と保護者8人も参加。9月の稲刈りも子どもとの体験イベントを企画していたが、新型コロナの影響で中止。まち協の9人で作業し酒米を収穫した。大田酒造では、そのうちの玄米を50%削って精米し、720ミリリットル入りの大吟醸2000本の製造に取り掛かった。

 その間、地区住民から名称を公募し、65件の応募があった。ラベルデザインは地元出身の画家、岩名泰岳さんに依頼。島ヶ原ののどかな自然を描いたラベルが完成した。

 同11月には酒販売店の免許を取得するために一般社団法人「島ヶ原風おこし協議会」を設立。1月下旬には地酒の完成を祝い、まち協の約100人のメンバーにお披露目し品評会を開く予定。

 増永さんは「初めて作った酒米で純米大吟醸ができるとは驚きであり、感激でいっぱい」と喜ぶ。委員長の南出藤作さん(68)は「島ヶ原では『はさめず醤油』が地域ブランドに成長したが、それに続くブランド品になれば」と期待を込める。

 地酒の発案者でもある企画委事務局の山菅善宣さん(65)は「私たちのアイデアが地域の方の賛同を得て1つの形になったのがうれしい。毎年1反ずつ耕作面積を増やし3年間で軌道に乗せたい。このような取り組みを契機として、地域が活性化することを期待している」と語っている。

 地酒は1本720ミリリットル入りで税込み1980円。島ヶ原風おこし協議会地酒販売店、島ヶ原温泉やぶっちゃ、菊野商店などで販売している。

 問い合わせはまち協の増永さん(090・4232・2371)、または岩佐さん(090・1562・2010)まで。

2022年1月29日付812号14面から

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