刑事課長 葛山裕倫

 「特殊詐欺」。皆さんも随分聞き慣れた言葉だと思いますが、依然として被害は後を絶たず、深刻な社会問題となっています。警察としても特殊詐欺を撲滅すべく、犯人逮捕の他、被害の未然防止対策などの取り組みを推進しているところです。

 実際、被害がどのくらいのものなのかと言いますと、昨年全国での被害件数は約1万8千件、被害総額は約390億円です。1日に1億円以上のお金がだまし取られている計算になります。

 三重県でも、被害件数約100件、被害総額約3億9千万円と深刻な被害が続いています。

 特に昨年、津市在住の80代の女性が「熊本県の災害復興」に関する嘘の電話をきっかけに、14回にわたり約1億4千万円を振り込んだという被害に遭っており、これは個人の被害額としては県警が統計を取りだした2004年以降、過去最高額でした。

管内でも200万円の被害

 名張署管内では9月13日、80代の男性が息子に成り済ました犯人から「会社の金に手をつけて株で損を出した。金を弁償しないといけないので助けてほしい」などという嘘の電話で、200万円をだまし取られる被害が発生しています。

 この詐欺は、いわゆる「オレオレ詐欺」の典型的な手口ですが、その他にも有料サイトの利用料金、架空の訴訟関係費用などを偽って費用を請求する「架空請求詐欺」、融資をするように偽って保証金などを要求する「融資保証金詐欺」、医療費や税金の還付を装う「還付金詐欺」といった手口での被害も相変わらず多く発生しています。
 特殊詐欺の被害者は高齢者と思われがちですが、「架空請求詐欺」や「融資保証詐欺」では若い被害者も多く、決して他人事ではありません。

 また最近増えている手口が、「カードすり替え型」というキャッシュカードの窃盗です。犯人側が警察官や金融機関の職員を装い、「キャッシュカードが悪用されている」などと嘘の電話をかけて自宅を訪問し、カードの点検や交換が必要だと説明し、暗証番号を書いた紙と一緒にカードを封筒に入れさせて、被害者の隙を見て別の封筒と入れ替えて盗むというものです。

 犯人グループは、巧妙に手口を変えてだましてきます。「新元号」や「増税」といったキーワードでだます手口も出ています。

 被害に遭わないために、「心当たりの無い電話やメール、はがきは無視する」「家族や、ご近所、そして警察に相談する」、この2点をしっかり守ってください。

 また警察では、犯人逮捕のために「だまされたふり作戦」の協力もお願いしています。「現金を振り込め」「自宅まで取りに行く」「東京まで持って来てほしい」などといった不審な電話があれば、すぐに警察に相談をお願いします。

2019年10月12日付 757号 26面から

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