【ポスター原画の最優秀賞に輝いた早田さんの作品】

 三重県伊賀市と芭蕉翁顕彰会は10月7日、芭蕉翁献詠俳句と絵手紙の特選・入選作品を発表した。特選は71点で、作者は松尾芭蕉の命日に当たる12日に市内で開かれる「第79回芭蕉祭」の式典会場で表彰される。

 同顕彰会によると、今年度の応募総数は3万3865点で、昨年度より3226点少なかった。部門別では、一般の部7858句(前年度比372句増)、テーマの部1953句(同69句増)、児童生徒の部2万664句(同2614句減)、英語の部1722句(同721句減)、連句131巻(同24巻減)、絵手紙674点(同168点減)だった。

 学校全体で意欲的に創作活動に取り組んだ「三重県知事賞」には、伊賀市の市立上野北小と県立伊賀白鳳高が選ばれ、市内の小学校8校、中学校1校から863点の応募があった芭蕉祭のポスター原画は、伊賀市立成和西小1年の早田夏乃愛さんの作品が最優秀賞に輝いた。

 ポスター原画の入賞・入選作品36点は、10月17日までハイトピア伊賀(上野丸之内)5階ギャラリー、10月31日から11月12日までの平日に市役所本庁舎(四十九町)1階市民スペースで、いずれも午前9時から午後5時まで展示される。見学自由。また、10月13日までは伊賀鉄道を走る「芭蕉祭俳句列車」(ピンク色の忍者列車)の車内にもプリントしたものを掲示する。

 各部門の特選作品は次の通り(敬称略)。

〈一般の部〉
【稲畑廣太郎選】
源流のひと雫より秋深む(伊賀市、坂井周子)
滴りの水の鼓動を掬ひけり(伊賀市、山下文子)
【井上弘美選】
火の尽きて闇蒼みゆく牡丹焚(杉並区、田中佳子)
仕上りの琴に糸張る夜なべかな(広島市、森本弘子)
【井上康明選】
今生は会へぬ人なり鳥雲に(北杜市、池永早知子)
柏餅木綿のやうな日暮くる(津市、山﨑満世)
【小川軽舟選】
見送りのなき家族葬蟬時雨(甲賀市、田中茂三)
早世の母の名は千代寒椿(神戸市、松田郁子)
【小澤實選】
部首ごとに並ぶ活字やウマ棚冷え(杉並区、梶等太郎)
蕉翁も汁啜りしか焼蛤(小牧市、鈴木年春)
【櫂未知子選】
まさをなるひかり咥へて冬鷗(小平市、大月弓香)
仮の世へ打ち上げられし昼寝覚(伊勢市、久世伸子)
【坂口緑志選】
我が身より切幣零れ夏越の夜(名張市、森岡秀美)
釈迦ヶ嶽ここ北限の幣辛夷(三重県、金津やよい)
【谷口智行選】
晩柑も入れ背負籠の島女(津市、服部美佐子)
鯛あらの骨啜りゐる涼しさよ(米子市、すずきみのる)
【西村和子選】
飛竜頭にかかる銀餡春深し(京田辺市、加藤草児)
つばくらめ雨の隙間を濡れもせず(志摩市、松村正之)
【長谷川櫂選】
願はくは転がる石に西行忌(さくら市、山越正彦)
白蚊帳に生後まもなき赤子かな(四日市市、森田久枝)
【星野椿選】
虚子塔や立待月を待つ心(河内長野市、中西博雅)
蟬鳴いて戦後といふは終り無く(田原市、那津七津)
【堀本裕樹選】
恋猫のときもありしか竈猫(小牧市、鈴木年春)
まぶしさの奥のさびしさ蝉時雨(文京区、岡本千晶)
【正木ゆう子選】
まん中に解あるごとし額の花(長岡市、伊藤一二三)
ブラバンの音色に大暑乗せにけり(志摩市、西尾澄己)
【三村純也選】
水濁る樋門に群るる梅雨鯰(名張市、谷村賢二)
軽トラの所狭しと狩の宿(神戸市、山内茉莉)
【宮坂静生選】
地に近く熟るる心根ゆすらの実(茅野市、加藤律子)
風雲の夕暮れ時や夜木菟稲架(堺市、森野哲州)
【宮田正和選】
麦藁に座り憩へり父と母(三重県、舘千恵子)
伐採の年輪に夏立ちにけり(名古屋市、 岩田半寒)

〈テーマの部〉テーマ=「百」
【片山由美子選】
宿坊の百の畳を替へにけり(茅ヶ崎市、塚本治彦)
風鈴の百の織りなす千の音(福岡市、久美二葉)

〈英語俳句の部〉
【河原地英武選・訳】

snowflakes…
the little girl learns
braille alphabet
風花や点字を習ふ女の子
(Daniela Misso,Italy)

end of the war
the tombstones
without shadows
墓石に影無かりけり終戦日
(Vladislav Hristov,Bulgaria)

〈児童生徒の部〉
【保育所(園)・幼稚園、小学1~3年=池本準一・佐々木経子・島井節・下村哲朗・中西紀歩共選】ひまわりがにかいのへやをのぞいてる(伊賀市、府中保育園、杉岡令那)
ながれぼしなれるといいなぱんやさん(伊賀市、白鳳幼稚園、川合えれな)
ゆうやけのなかにおひさますんでいる(三重県、鵜川原こども園、梅枝糸)
かいものでままとたしざんなつやさい(伊賀市、友生小1年、木村莉心)
トランポリンとんだらみえたなつのやま(伊賀市、西柘植小1年、山田理生)
なつやすみままとおんなじおべんとう(伊賀市、壬生野小1年、麻植椋太)
じいちゃんのつくったかかし田をまもる(伊賀市、西柘植小2年、内田京佑)
にゅうどうぐも山へのぼるととどきそう(伊賀市、大山田小2年、池田帆花)
手を丸めホタルにそっと近づいた(甲賀市、甲南中部小2年、安岡茉結)
えんてんかわたしのサーブうけてみろ(伊賀市、上野西小3年、平井啓愛)
ほたるとぶ光の線を書いている(伊賀市、上野北小3年、坂口希望)
おもくなるあせとなみだのじゅうどうぎ(伊賀市、府中小3年、山田唯愛)

【小学4~6年=岡島千秋・西田ゆかり・松村咲子・森岡秀美・中島庸子共選】
近すぎて見えた花火に手をのばす(伊賀市、上野西小4年、森本真珠)
目をつぶり母にぬられるひやけどめ(伊賀市、友生小4年、森安彩葉)
いじょう気しょう日がさデビューの帰り道(伊賀市、友生小4年、田中雪路)
袖とおす母の浴衣に赤い帯(伊賀市、上野北小5年、田中夢乃)
ぼくたちに近づいてくる大花火(伊賀市、成和西小5年、若井涼介)
玉の汗ソーラン節の綱を引く(名張市、名張小5年、北裏春翔)
ネクストのぼくのバットにおにやんま(伊賀市、上野東小6年、大知奏心)
灯にひかれ窓にヤモリの指五つ(伊賀市、上野北小6年、山村奏心)
入道雲海のはてまでせりあかる(伊賀市、友生小6年、井関涼太)

【中学校=岡森競一・坂石佳音・服部登紀子・東構東子・福山良子共選】
雨あがり傘たたむ間もなく炎天(伊賀市、崇広中1年、佐々木絢大)
雨願い空を見上げる稲と父(伊賀市、崇広中1年、中山心晴)
汗腺がこわれるほどのもうしょ日だ(伊賀市、緑ヶ丘中1年、川合遥)
見上げれば人工衛星通る夏(伊賀市、上野南中2年、馬場亮太)
数式のきれいに並ぶ新樹の夜(松山市、愛媛大学付属中2年、原田泰輔)
覚えられぬ焦燥感に汗ひとつ(古賀市、古賀東中2年、森千幸)
「負けました」祖父の一言夏将棋(伊賀市、緑ヶ丘中3年、稲沢虎哲)
水筒に多めの麦茶朝曇(伊賀市、島ヶ原中3年、河本優海)
似合わないアロハシャツ着るお父さん(甲賀市、信楽中3年、松本深咲)

【高校=岡森競一・坂石佳音・服部登紀子・東構東子・福山良子共選】
ひまわりの列のむこうに青い海(伊賀市、伊賀白鳳高1年、清田萌生)
自転車で汗を乾かす帰り道(伊賀市、伊賀白鳳高1年、宮島蓮)
一息に一山越へる蒼鷹(高梁市、角川ドワンゴ学園S高1年、田村豪)

〈連句の部〉
【小川廣男・小池正博・西田青沙・森川敬三共選】

絵手紙の部・亀島さんの作品

〈絵手紙の部〉
【森田満枝・福喜多辨共選】 伊賀市、亀島典子

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