【登内さん】

 10月1日に地方独立行政法人に移行(独法化)する名張市立病院の新理事長に就任する予定の医師、登内仁さん(66)がYOUの取材に応じ、今後の方針や課題について語った。登内さんは「救急や小児医療は市民にとってかけがえのないもの。何としても維持していきたい」と力を込めた。

登内仁(とのうち・ひとし)さん
東京都出身で、1984年に三重大学医学部を卒業。消化器外科を専門とし、県立総合医療センター副病院長や桑名市総合医療センター病院長などを経て、昨年4月に名張市立病院の顧問に就任した。

──市立病院の現状をどう見ているか
 「職員数と救急車の受け入れ台数で比較すると、医療資源の制約を考えればかなり健闘している(在院日数を減らし多職種連携でベッドの空床をつくる努力をしている)。課題は看護師や薬剤師などの不足で病床を制限している点だが、独法化によってスタッフ確保のさまざまな対策が取りやすい環境になる」

──地域医療についての思いは
 「市立病院は1997年の開院以来28年、市民の悲願だった救急や急性期医療、小児医療を担ってきた。住民から『救急はどうなるのか』といった不安の声を聞く。市民にとって欠かせないものだからこそ、どう維持していくかが大きな課題だ。医療DXの導入、ワークシフト、伊賀市の病院との連携などを施行し、持続可能な体制を整えていく」

─働きやすい職場づくりへの考えは
 「職員の業務改善を図り、時間外の削減・有給取得率の改善を進める。職員間連絡ツールとしてスマホチャットの使用、看護記録に対して簡便化ソフトの導入を検討中。心理的により安心して働けるよう、ハラスメント対策として申告しやすい制度を新たに作る。ペイシェントハラスメント対策も策定した。『コードホワイト』と呼ぶ職員を守る安全対策も制度化した。福利厚生の充実として託児所の無償化を実施する。第1期3年半の間に病児保育の実現を目指す。働きやすさがなければ人材は定着しない」

──診療体制で注力したい点は
 「2025年度は消化器センター(消化器内科・外科)が増員となった。それに伴い、4月には超音波内視鏡も導入し、より専門性の高い治療が可能になり、内視鏡治療が大幅に増えた。高齢化を踏まえ、今後も不整脈治療、脳卒中治療、白内障手術、大腿骨頭骨折手術など、地域のニーズに即した医療に力を入れたい」

──目指す病院像は
 「まずは職員が『ここで働きたい』と思える病院にすること。その上で救急や小児といった、市民が望む医療を継続する。中期計画の指標を院内ホームページで公開し、全職員が医療情報を共有できる体制を整えていく。現場から意見が出やすい環境を作り、風通しの良い病院経営を実現したい」

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