「すみませんを1万回言えば、きっと平気になる」。視力を失った後、白杖を手に47都道府県とニューヨークを1人で旅した西亀真さん(69)=三重県名張市すずらん台=の講演会が9月13日、同市南町の名張産業振興センターアスピアで開かれた。著書「盲導犬シエルと歩いた幸せの道」の出版を記念して地元で開催してきたもので、今回が最終回。9才の盲導犬シエルと登壇し、約50人を前に、見えない世界で見つけた生き方を語った。

「見えていた時より今の方が幸せ」
広島県三原市出身の西亀さんは、大阪の大手百貨店のシステムエンジニアだった39歳の時、難病の網膜色素変性症と診断された。徐々に視野が狭まり、やがて視力を失った。「かわいそうと思われるのが怖くて、1人ではどこにも行けなかった」と振り返る。
そんな自分を変えようと、人に道を尋ねる1人旅を決意。「すみません」を繰り返すうちに、外へ出る勇気を身につけた。道々で見知らぬ人の親切に助けられるうち、「見えなくなったことで、多くの人の支えや日常のありがたさに気づけた」と実感したという。ニューヨーク行きの直前には不安からキャンセルも考えたが、「未来の空白を不安で埋めるか、希望で埋めるか」という言葉を胸に旅立った。
仕事では、カウンセリングを学び、産業カウンセラーに転身。2020年からはシエルと暮らし、今回の著書を出版した。
講演では参加者がアイマスクを着け、点字に触れる体験も。「見えていたころより、今の方が幸せ」と語り、盲学校時代の恩師から教わった「障害を壁と思うか、扉と思うかは本人次第」という言葉を紹介して、諦めずに挑戦し続ける大切さを呼び掛けた。

終盤には、失明前に見たかった娘の花嫁姿への思いを込めた自作の歌を披露し、来年6月に10才を迎え引退するシエルにも感謝の歌を贈った。そして参加者に「決して諦めないで、あなたの夢を」と語り掛けると、会場から大きな拍手が送られた。
講演を聴いた同市桔梗が丘の北山真美さん(70)は「『諦めたらだめ』というメッセージがとても伝わった。いい講演だった」と話した。
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