【工房で作品を紹介する高橋さん=伊賀市西湯舟で】
「秀でた先輩たちを追い掛けるより、自分にしかできない陶芸を」。異なる色の土を組み合わせて模様や柄をつくり出す「練り込み」と呼ばれる技法で、動植物などをモチーフに唯一無二の陶芸に取り組んでいる三重県伊賀市西湯舟の高橋由紀子さん(43)が、伊賀地域で初の個展を8月2から10日まで市内のギャラリーで開く。入場無料。
高橋さんは滋賀県近江八幡市出身。幼いころから絵を描くのが好きで、短大時代に触れた芸術の中でも陶芸に興味が湧いたことから、27歳で信楽窯業技術試験場へ入り、1年間、陶芸の基礎を学んだ。150年続く信楽焼の窯元に就職した後、32歳で独立した。
代名詞でもある練り込みの技法は、独立直後、国内外のアーティストを招いて活動を支援する事業「アーティスト・イン・レジデンス」に参加した際に存在を知り、更に磨いていった。「クッキー作りがヒントになった」といい、一見してどうやってできているか簡単には分からないことも多い。作り方を尋ねられた時に幾度となく繰り返してきた「金太郎あめみたいに作るんです」という説明だけではなかなか伝わらないらしい。
10年ほど信楽に暮らし、新たな住居と工房になる物件を探す中、伊賀市の空き家バンクを通じて現在住む家を見つけ、2024年春に移住した。倉庫だった離れを工房に利用し、電気窯で焼成している。全国各地で個展を開き、インスタグラム(@yukiko_takahashi)などを通じてファンも増えている。
「もっとできる」と進化
「毎回自分のベストを尽くして制作していても、数年前の作品を見ると『今ならもっとできる』と思うことがある。そういう時に初めて成長を感じることができる。また、完成し見てもらうと新たな創作意欲が湧く」。進化を止めない高橋さんは「好きなことで仕事ができているありがたさを日々かみしめている。今回の個展が、伊賀でさまざまなつながりが生まれていくきっかけになれば。皆さんの反応や感想が楽しみ」と思いを語った。
個展は同市上野丸之内のギャラリー是空で、午前11時から午後6時(最終日は同5時)まで。練り込みで作られた食器や花器など約100点を展示予定。
問い合わせは同ギャラリー(0595・21・8818)まで。