縁起の良い富士も雲海も大波も、表現は紙の筒。三重県名張市富貴ケ丘の田中純吉さん(82)が、ラップなどの巻き芯として使われる紙製筒「紙管」を再利用し、絵柄や家具など独自の作品づくりに取り組んでいる。
手先が器用で、子どものころは竹ひご飛行機作りに熱中。その後は約半世紀、作品づくりから離れていたが、定年後に家族から「椅子を作ってほしい」と頼まれたのをきっかけに制作を思い立った。材料は、会社員のころに製品の梱包で出ていた廃材の紙管を活用することを思いついた。
ナイロン袋やテーブルクロスの芯などを求めてホームセンターやスーパーなども巡り、廃棄されるはずだったさまざまな太さの紙管を譲ってもらった。輪切りにして使うだけではなく、円弧の形にして接着剤で組み合わせ、幾何学模様を作り出す。紙管は強度が高く、木枠と組み合わせて人が乗れるソファーやベッド、テーブルなども手掛けた。
2年ほど前からは、葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」の再現など、絵柄にも挑戦するようになった。細かい丸を表現するために、一部に紙製ストローも使用。2022年の市美術展では、北斎作品を再現した「大波」で岡田文化財団賞に選ばれた。
田中さんは「私の生きがい。今後もいろんな作品を作りたい。自分で始めた方法で仲間がいないので、興味を持って頂けたら」と話す。
名張市蔵持町里のぎゅーとらラブリー蔵持店内のワイズカフェでは1月中、田中さんが制作した富士の雲海の作品を展示している。
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