【麦ストローの束を手にする小松さん=名張市で】

地域の魅力も発信

 SDGs(持続可能な開発目標)やプラスチックごみによる海洋汚染問題への関心が高まる中、三重県伊賀市内で育った麦の茎を使った環境に優しい本物のストローの製作販売を同市の小松亜衣子さん(41)が始めた。「農家の方を応援し、地域の魅力も一緒にお届けできれば」と話す。

 ストローとは本来、英語で麦わらのこと。麦の茎の中は空洞で、プラスチックのストローが流通する前は、飲み物を飲むために一般的に使われていた。

冷たいドリンクに使用した麦ストロー(つぐみカフェ協力)

 小松さんは愛知県出身で、大学時代は北海道で生物生産学を学び、伊賀市の「伊賀の里モクモク手づくりファーム」に就職。結婚後、10年ほど前に古民家を購入し、野菜の栽培や養鶏を始めたところ、近くで麦を育てる人から「麦わらを使っていいよ」と声を掛けられた。ニワトリの敷きわらにするなどして活用したが、収穫後の麦畑にはまだまだ大量の麦わらが残っていた。

 3年ほど前、夫が「麦ストロー」について調べ、小松さんに紹介。麦わらの活用法を広げようと、各地の事例を参考にしながら自宅用に作り始めた。

 昨夏、麦わらを活用した事業を立ち上げようと、県の起業者養成講座に参加。他の参加者との意見交換など約半年間のカリキュラムを経て今年、「三重麦ストロー製作所」を立ち上げた。

 麦ストローは、麦わらの節と節の間を切り取って洗浄、消毒、乾燥などの工程を重ねて完成させる。同製作所では小麦とライ麦を使用しており、内径2から4ミリ、長さ18から20センチの2種類のストローに加工している。

 8月末現在は、モニターカフェを募集して業務用に販売。県内5店舗がモニターになっている。

耐水性あり、最後は土に 「広めていけたら」

 7月に小松さんが作る麦ストローを導入した名張市下小波田の「つぐみカフェ」オーナー、内山克則さん(73)は「脱プラの波の中、ストローをどうしようかと考えていたタイミングで案内を頂いた。思ったより強くてにおいもせず、味にも影響がない。しかも地元のもので、お客さんからの評判も良い」と高く評価。小松さんは「紙ストローのようにふやけず、洗浄・乾燥して2、3回は使うことができる。天然資源なので、最後は自然に分解して土に還る。もっと広めていけたら」と話した。

 今後の事業展開などは、同製作所のインスタグラム(@miestrawatelier)で発信していくという。

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