【花火の打ち上げに向けた仕込み作業に取り組む従業員たち=山添村片平で】

 コロナ禍で全国的に中止が相次いだ夏の風物詩、花火大会。今年は新型コロナウイルスの感染症法上の5類移行を受けて開催に踏み切る所が多く、花火の打ち上げを手掛ける奈良県山添村片平の会社「脇坂火薬」は今夏、50会場以上で大小計5万発超を打ち上げる。光と音が織りなす伝統の芸術美を、三重県の伊賀地域を始め各地の夜空に届けるべく、スタッフたちが準備に汗を流している。

 同社は1925(大正14)年の創業で、社長の脇坂晃治さん(46)は2015年に5代目を継承。志摩スペイン村などの観光施設や伊賀、名張、宇陀市のほか各地の花火大会の打ち上げなどを手掛けてきた。

 ところが20年の新型コロナウイルス感染拡大で、花火大会が相次いで中止に。脇坂さんは「夏なのに初めて暇になった。会社の電話が鳴っても『今年は花火をやめる』の連絡ばかりだった」と振り返る。同社の売り上げは、コロナ禍以前と比べて8割以上減となる大打撃を受けたという。

 「花火って、いらんのじゃないか」「主催者は苦労があるので、このまま復活してくれないのでは」といった不安感が漂う中、全国的に行われた「サプライズ花火」に同社も参加。家にこもるしかなかった時期に、離れた場所にいる大勢の人々が同じ感動を共有できる花火が注目され、「思いのほか反響があった」と振り返る。

 同社が打ち上げを担当する花火大会は、コロナ禍前と比べて昨年は6割程度、今年は8割程度まで戻った。主催者から「今年はやっとできるわ」とうれしそうな声で電話が掛かってくるといい、脇坂さんは「本当にありがたい。期待にきっちりと応え、無事に上げなければ」と気を引き締める。

 4月から同社のインスタグラムのアカウント「@wakizaka_kayaku」を管理している妻のみゆきさん(33)は本格復活の夏に向け、同社が手掛ける花火が対象のフォトコンテストを初めて企画した。7月14日から8月27日まで、ハッシュタグ「#脇坂火薬花火2023」と打ち上げ場所、花火大会名を添えて花火の写真を投稿すると、グランプリにはスタッフ用Tシャツ(非売品)が贈られる。

 伊賀地域で同社が手掛ける打ち上げ花火は、いずれも4年ぶりとなる梅が丘夏祭り(7月15日)、青山夏まつり(16日)が皮切りで、伊賀市市民花火大会(23日)や名張川納涼花火大会(29日)といった規模の大きなものへと続く。フォトコンテストの対象となる打ち上げ花火の場所は、インスタグラムで随時告知していくという。

 脇坂さんは「花火は一瞬で消えてしまうものだが、この夏は外に出て夜空を見上げて頂き、皆さんでそれぞれの思い出を作って頂けたら」と話した。

花火玉とTシャツを手にフォトコンテストへの参加を呼び掛ける脇坂さん夫妻=同

2023年7月15日付847号1面から

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