【ドラマ「サンクチュアリ―聖域―」で猿谷役を演じた澤田さん(本人提供)】

 三重県伊賀市出身で千葉県在住の元幕下千代の眞、澤田賢澄さん(36)が、米動画配信大手Netflix(ネットフリックス)で5月4日から世界配信されている大相撲が題材のドラマ「サンクチュアリ―聖域―」で俳優デビューを果たした。昨年からは海外の相撲ショーにも出演しており、「世界中に相撲の種まき」をすべく、活躍の場をますます広げている。

弟は現役関取・千代の国

 澤田さんは最高位前頭筆頭、現十両の千代の国関(32)=九重部屋=の4つ上の兄で、2012年9月場所で引退後は飲食店を経営。ところが伊賀市内で店を開いていた20年、新型コロナウイルス感染拡大で事業は大打撃を受けた。

 そんななか、澤田さんのツイッターに制作会社から「相撲を題材にしたドラマがある。体重100キロ以上の力士役のオーディションに応募しないか」という内容のダイレクトメッセージが届いた。

 初めのうちは怪しんだが、インターネットで調べて事実と確認できたため、「店の宣伝にもなれば」と応募。体重を増やして臨んだ2度の審査を経て、主人公猿桜(一ノ瀬ワタルさん)の兄弟子猿谷役を勝ち取った。

 猿谷は関取復帰を目指す元小結の役で、物語で重要な役割を担う存在。猿谷の出身地は、澤田さんに合わせて伊賀市と設定された。

 澤田さんは「猿谷は弟の境遇と似ていて、相撲への向き合い方など参考にして演じた」と話す。初めての撮影現場については「演技は難しいが、みんなで一つのものを作り上げる喜びや楽しさをすごく感じた」と振り返る。

ドラマのメインキーアート。中央が一ノ瀬さん、左から2人目が澤田さん(同)

「相撲の種まき」元大関小錦さんらとショーも

 約2年間の撮影を終えた後、澤田さんは肉体を生かした役者の道に進むことを決断。伊賀市内の飲食店の経営権は従業員に譲り、関東に拠点を移した。

 その後、元力士の仲間とともに「力士俳優」のジャンル確立の取り組みに参加。ハワイ出身で元大関小錦のKONISHIKIさん(59)が主催し、米国ニューヨークやワシントンなどを巡る相撲ショー「SUMO+SUSHI(スモウ・スシ)」の登場力士の1人になった他、インドやサウジアラビアなどでの仕事も舞い込むようになった。

 米国でのショーについて澤田さんは「小錦さんのMCが絶妙で、毎回チケットは完売。観客からは地面が揺れるほどの歓声やスタンディングオベーションが起こり、私たちまでわくわくする」と話す。大都市のスタジアムなどを会場に、観客にすしなどを提供しながら相撲のルールや考え方を紹介したり、取り組みを見せたりする内容で、大相撲の巡業にエンターテインメントの要素を合わせたものに近いという。

 澤田さんは過去3年間を振り返り、「つらい時期もあったが、自ら動いたことで状況は変わっていった。これからも前を向いて、全力で挑んでいきたい」と語った。今後は、6月からのショーに向けて再び渡米する。既に別のドラマの出演も決まっているという。

相撲ショーの舞台上で並ぶ小錦さん(中央)と澤田さん(左から3人目)ら(同)

2023年5月27日付844号1面から

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