【満開の桜の下で石橋さん(右端)に2冊の絵本を贈った(左から)大久保さん、妹の実乃里さん、母親の浩美さん=名張市蔵持町原出の蔵持小で】

 難病や障害がある三重県名張市在住の大久保朱莉さん(12)が、「支援してくれた先生への感謝」「図書館に例えた自分の頭の中」の2つを物語にした。6年間通った市立蔵持小学校からの卒業を機に、それぞれ絵本になった。

「石橋先生とわたしの5つの思い出」の表紙

 大久保さんは、1歳で右脳萎縮と左半身まひ、1歳半で指定難病「中枢性尿崩症」が判明。尿崩症は尿量が多くなる病気で、「3万人に1人」と言われる。体内から水分が失われ、十分な補給を行わないと脱水症状から命の危険につながる。

 支援を受けながら保育所、小学校と進んだ大久保さんは、3年生の冬に支援学級の担任に着任した石橋祐香さん(33)と出会った。2つの絵本のうち、「石橋先生とわたしの5つの思い出」は、卒業までの3年3か月間の出来事と感謝の思いをまとめたものだ。

 右脳萎縮による感覚障害の特性で大久保さんがパニック状態になってしまった時、黒板に状況を書いて頭の中の整理を手伝ってくれたこと▽こだわりが強くその場に合わない行動をとってしまった時に、叱ってくれたこと▽日々の服薬や水分摂取、体調管理を助けてくれたこと▽甘えずに自分でできることを取り組むよう促してくれたことなど、手書きの絵や文章で場面を表現。「私は先生が大好き。1番いい先生です」とつづった。表紙では、中学の入学式で並ぶ大久保さんと石橋さんをイメージした絵を描き、「本当は先生と一緒に中学に行きたかった」との思いを伝えている。

私の頭の中はこんな感じ 図書館に例えて

 もう一つの絵本「あたまの中のとしょかん」は、障害の特性でパニックになったりする頭の中を大久保さん自ら図書館に例えて物語にしたもの。

「あたまの中のとしょかん」の表紙

 勉強などで本は増えるが、逆さまに入れたり奇麗に並べられなかったりして、本がどこにあるのか分からなくなる▽「本がばさっーと」落ちて困ることがある▽自分で本棚に直せないとき、周囲の皆が手伝ってくれることがうれしい▽私も誰かが困っていたら本の整理を手伝ってあげたいなどと話は展開する。イラストの構図は妹の実乃里さん(11)が考え、母でイラストレーターの浩美さん(50)が描いた。

 大久保さんは小学生最後の日の3月31日、蔵持小を訪れ、石橋さんに2つの絵本をプレゼントした。渡した大久保さんは「石橋先生がいなくても、教えてもらったことを生かして中学で頑張りたい」と話し、受け取った石橋さんは「びっくりした。中学でも、自分のペースで成長していってほしい」と期待した。

 絵本の内容の一部は、浩美さんのツイッターアカウント(@SkySeaingMakar)で公開されている。同市百合が丘西5の児童発達支援センター「どれみ」にも絵本を寄贈しており、閲覧できるという。

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