「成長見守ってきた証」
「ここに腰を下ろして校舎を眺めると、いろんな出来事がよみがえる」。児童数減少によって2007年3月末から16年間休校し、校区再編によって今春閉校する三重県伊賀市の市立比自岐小学校(同市比自岐)で、約35年前に植えたメタセコイアの木を、地元で製材所を営む大西恒雄さん(73)が丸太ベンチに加工し、グラウンドにお目見えした。
長男の仁さん(48)が6年生の時、自身が役員を務めていたPTAの奉仕作業の際に地元の人から「成長が早い木なので学校にどうか」と若木を譲り受け、グラウンド南側の中央付近に植えた。樹高は十数メートル、幹の太さは50㌢ほどに育ち、グラウンドにあるイチョウと桜の大木とともに学校のシンボル的な存在だった。
だが、細かい落葉がおびただしく、枝が道路際のネットにも絡まっていたため伐採することになり、大西さんは「ベンチにして皆に使ってもらったら」と発案。昨夏、仁さんとともに伐採作業をし、数か月間の乾燥を経て、「座るのにちょうどいい高さ」という45センチに切りそろえた。コンクリートの基礎やビス止め、防腐処理も施され、7基のうちの1つは枝も生かしてイノシシのような形に仕上げた。
大西さんの在校時は「全校児童が120人くらいいた」そうで、現校舎の北側にあった木造平屋の旧校舎で学び、仁さんが入学した1981年に現校舎が完成した。今年1月中旬に完成したベンチは、月1回のグラウンドゴルフなどで訪れる地元の人たちの休憩場所になっていて、大西さんは「小学校があったこと、この木が子どもたちの成長を見守ってきたことが少しでも伝われば」と話していた。
2023年3月25日付840号2,3面から
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