「川や田んぼで魚を捕って遊んだのが原体験。自然と生き物が好きになったのかも」。三重県名張市富貴ケ丘2番町の城内史郎さん(72)は水生昆虫や魚類の研究をライフワークにする傍ら、それらを題材に細部まで再現した細密な水彩画も描いている。
出身は三重県最南端の紀宝町。奈良県内の小中学校に教員として勤めていたころ、夏季休暇を利用し、水生昆虫の手ほどきを受けた当時の奈良産業大、御勢久右衛門教授(故人)とともに、県内を流れる吉野川や県外の河川へカゲロウなどの生物調査で幾度となく足を運んだ。他にも海外での水生昆虫調査に参加したり、大宇陀、山添、東吉野などで水生昆虫の観察会を開いたりした。
細密画を始めたのは7年ほど前。「日本魚類図譜」を著した高校時代の恩師で、奈良県内の河川を一緒に歩き回った福井正二郎さん(故人)の勧めだった。鉛筆で下書きした後、ボールペンで清書し、水彩絵の具の淡彩で仕上げる方法で、水生昆虫や淡水魚などを描くようになった。
題材となる生物の大きさは実際に測り、拡大・縮小して描く場合は縦横比などをきちんと計算するが、長年培ってきた研究者としての観察眼が絵の正確さ、繊細さに現れている。「まだまだ未熟だが、皆さんに見てもらいたい」とほほ笑む。
12月17、18日に同市南町のアスピアで開かれる「伊賀名張アート&クラフト展」では約20点を披露する予定。城内さんは「子どもたちと触れ合い、返ってくる正直な反応に元気をもらってきた。絵を通じて自然に関心を持ってもらえれば」と話した。
2022年12月10日付833号4面から
- Advertisement -