【錦生赤目小の児童が参加したヒノキの植樹=名張市で】

 奈良・東大寺のお水取り(修二会)で使う松明(たいまつ)を毎年寄進する三重県名張市の伝統行事「伊賀一ノ井松明調進」。市立錦生赤目小学校(赤目町檀)の4年生と5年生計41人が11月25日、松明の材料となるヒノキ100本を極楽寺(赤目町一ノ井)が所有する近くの山の斜面約2000平方メートルに植樹した。伐採に適した大きさに成長するまで、少なくとも60年かかるという。

 行事は770年以上続くとされ、地元住民でつくる「伊賀一ノ井松明講」のメンバーらが続けている。樹齢80年から120年ほどのヒノキを伐採して松明に加工してきたが、近年、適した木の数が少ないことがわかってきた。講によると、植樹は10年ほど前にも実施し、その時は30本から40本を植えていたが、鹿による食害であまり育たなかったという。

 講は行事の将来のため、今回の植樹を計画。費用は「みえ森と緑の県民税市町交付金」を活用し、地域の伝統文化を学ぶ児童たちにも初めて参加してもらった。

植樹前に児童たちに語り掛ける森本講長(右端)=同

 この日、山に入った児童たちに、森本芳文講長は「今日植える木は、皆さんの子や孫の世代で東大寺に持っていくことになる。植えたことに誇りを持って、後世に伝えて欲しい」と語り掛けた。

 伊賀森林組合の職員から植樹の方法を教わった児童たちは、斜面に20センチほどの穴を掘り、1メートル弱の苗木を次々に植え、食害防止のネットをかぶせていった。参加した4年生の男児(10)は「土が固かったけど、うまく掘れた。60年後は何をしているか分からないけど、大きく育ってほしい」と話していた。

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