【スーパーカブに乗って集まった(右から)竹岡さん、大黒さん、水垣さん=名張市黒田で】

 「運転する姿が楽しそうだった。祖父が大切にしていたからこそ、自分も大切に」。三重県名張市桔梗が丘の会社員、竹岡大輔さん(42)は2年前、祖父・保さん(故人)が愛用していたホンダの1991年製原付バイク「スーパーカブ」を伊賀市内の実家で見つけた。長らく点検を担ってきた業者に依頼して修理し、二輪好きの仲間たちとツーリングを楽しんでいる。

祖父・保さん

 竹岡さんにとって「普段は優しいけれど、礼儀などは厳しく注意された」という存在の保さんは、通勤や農作業の足としてバイクを使っていたが、晩年は乗れなくなり放置されていた。2020年夏、実家を片付けていた竹岡さんは、農機具の下敷きになり、あちこち壊れて廃車やむなしの車体を発見。「懐かしい。もう一度動いている姿が見たい」と直感した。

 燃料タンクや足回りのパーツをいくつも交換し、キャブレター(燃料供給装置)はオーバーホール。依頼から数か月後に念願がかない、保さんも感じていたであろう「風を切って走る楽しさ」を味わうことができた。

 そのことを、職場の先輩でバイク好きの水垣敦さん(44)に話した矢先、竹岡家の隣に住んでいた男性が生前乗っていたスーパーカブが放置されていると知る。竹岡さんのものとほぼ同時期に製造された車体で、持ち主に了解を得て水垣さんが譲り受け、同じ業者に修理を依頼。2人でツーリングに出掛けるようになった。

 最近は、2人の影響で祖母の知人からスーパーカブを譲り受けた大黒黎さん(27)ら職場の仲間5、6人が、休みを合わせて県内や奈良方面へ出掛けている。竹岡さんは近年、祖父が耕作していた田も引き継いだといい、「祖父と同じことをしてみて、表情や思い出が甦(よみがえ)ってきた。これからも仲間と楽しく乗り続けたい」と話していた。

2022年9月24日付828号2面から

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