創業前から
三重県伊賀市上野小玉町の老舗茶屋「むらい萬香園」に、1909(明治42)年の創業以前から今も現役で時を刻み続ける大時計がある。3代目店主の村井元治さん(69)に話を聞いた。6月10日は「時の記念日」。
この大時計は木製ケースの高さが220センチ、幅67センチ、奥行30センチ。横浜の外国人居留地で輸入・販売を手掛けていたコロン商会(J・Colomb&Co)が取り扱っていた商品で、2つある重り(分銅)で歯車に負荷をかけて動く。文字盤には分銅の糸を巻き上げるねじ穴がある。
文字盤の上に備え付けられた鐘は分針がローマ数字の12と1、6を指すと、「チーン」という高い金属音で時を知らせる。1を指したときの鐘は12の鐘を聞き逃した人に5分経ったことを知らせているのだという。
110年以上も働いている大時計は、湿度が高い時期になると、針が止まってしまうことがある。村井さんは「同じ人が巻かないと狂う。やさしく、ボチボチがコツ。でも結構正確ですよ」と笑う。
「見守ってくれているよう」
店内には他にも、学校のチャイムなどで聞き覚えがある「ウエストミンスターの鐘」で時刻を知らせるドイツ・ユンハンス社製と、鏡越しに使う米国製の逆転時計が壁に掛けられている。この2つの時計はぜんまい式で父の故・尊さんが生まれた1916(大正5)年に製造された。村井さんは「おじいちゃん、おばあちゃんのお世話をしている感じ。ねじを巻くのも気を遣いますが、いつも店を見守ってくれているように感じます」と話した。
2022年6月11日付821号1面から
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