【教会でパイプオルガンを弾く大喜多さん(提供写真)】

 大阪で生まれ三重県名張市で育った大喜多美帆さん(47)は、スイス北部のチューリヒ州ネフテンバッハというワインが特産の人口約6000人の村で、800年以上の歴史を持つプロテスタント教会の専属パイプオルガン奏者として活躍している。

 大喜多さんは幼少時に家族と名張に移り住み、1歳年上の姉、里枝さんとともにピアノを習い始めた。小中学生時代は、県内外のコンクールに参加し、姉とともに切磋琢磨。ドビュッシーなどフランス音楽を好む姉、ベートーベンなどドイツ音楽を好む妹といった違いも生まれ、ライバルかつパートナーとして互いを高め合った。

 中学卒業後は松阪女子高(現・三重高)の音楽科へ、大学は姉と同じ大阪音楽大へと進んでピアノを専攻。在学中に姉妹デュオを結成し、地域のホールや小学校、レストランなどで演奏を披露した。

 大学卒業後は三重高の常勤講師として4年間勤務したが、海外で技術を高めようと、知り合いの大学教授を頼ってスイスのチューリヒ芸術大に留学。ピアノ漬けの3年間を経て室内楽演奏家資格を取得した他、知り合った5歳年上の大学職員、ドナートさんとゴールインした。

スイスのネフテンバッハで暮らす(右から)大喜多さん、ドナートさん、長男の寿人君(同)

 結婚後、チェロ奏者でもあるドナートさんから「オルガンを習ってみたらどうか」と勧められ、趣味の一環で始めた。ドナートさんの母方の祖父が著名なオルガン奏者・作曲家でもあり、数多くの楽譜が残されていた。これを機に、大喜多さんはオルガンの世界に進むことになった。

 オルガンはピアノと異なり、鍵盤ごとに割り振られた幾本ものパイプに空気を流すことで音を出す。音色は鍵盤近くのストップというレバーで調整する。足元にもペダル型の鍵盤があり、幅広い表現が可能な一方、両足が地面から離れるため、体を支えるために腹筋が必要だ。

 大喜多さんはチューリヒ芸大のオルガン科で2年間、教会音楽を学び、チューリヒ州各地の教会礼拝で演奏経験を重ねた。このころ、ネフテンバッハの教会の専属オルガン奏者に空きが出、その職に就くことになった。

 音楽で始まり音楽で終わるというほど、教会行事に音楽は欠かせない。礼拝や子どもの教育活動など、演奏場面は幅広いという。

 大喜多さんは「音楽を通じて教会を活性化させるのが私の役割。パイプオルガンの音色には重厚感があり、大音響で弾くと本当に気持ちがいい。日本に帰った時には、オルガンのコンサートを開いてみたい」と語った。

2022年4月23日付818号1面から

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