【ジオラマを紹介する塚本さん(左)と芳宏さん=伊賀市上野車坂町の自宅で】

訪れた町や駅 盛り込む

 自宅2階に広がる、数々の車両が走り抜ける空想の町には、夢がたくさん詰まっている―。縦2・7メートル、横1・8メートルの鉄道模型(Nゲージ)のジオラマを数年がかりで自作している三重県伊賀市上野車坂町の塚本孝之さん(64)は、コロナ禍で旅行に行けないもどかしい気持ちを全て鉄道模型に捧げている。

 鉄道模型が好きだった父の影響で、幼少時から電車や旅行が好きになり、仕事の関係で北九州市に住んでいた約15年間には、九州のJR全線を乗り尽くした。近年は乗るだけでは物足りなくなり、7年ほど前には、とうとうジオラマ作りに着手した。

こだわりのポイントを解説する塚本さん

 まず駅舎を作り、そこから線路のレイアウトを考える。レールは「お気に入り」だという地平と高架の2層にし、畑あり、山ありの風景には五重の塔だって建っている。町にはバスや乗用車が走り、高層ビルが立ち並ぶ近代的風景の隣には茅ぶき屋根の民家も。透明の樹脂で作った川には舟も漂う。地平の線路・情景と高架部分のカーブをうまく合わせるのには苦労したそうだ。

 特に時間を要したのは「本物らしくこだわった」というトンネル。山型に加工した発泡スチロールを岩のように塗装してから木を模したこけなどを貼っていき、実際のトンネルのように内側もゴツゴツした岩肌を再現した。夜はライトを仕込んだビルが輝き、幻想的できらびやかな町と化す。「こんな光景を眺めていると、ふつふつと感動するね」と表情が緩む。

 Nゲージは実物の150分の1サイズで、線路幅は9ミリ。レールの総延長は「1キロくらいあると思う」。コントローラーで4路線同時に動かすことができ、全ての線路を通って戻るまでには10分近くかかるそうだ。

 車両の模型は、かつて運行されていたスキー列車「シュプール号」、真っ赤な外装で九州を走っていた「レッドエクスプレス」など、通勤電車から新幹線まで500両・100編成以上あり、「8割くらいは実際に乗ったことがある」という。

 自身がこれまでに訪れた町や駅の「良いところを全て盛り込んだ」というジオラマ。5年前からは弟の芳宏さん(63)もレイアウトを手伝ってくれているそうだが、仕上がりはまだまだ先のよう。「落ち着いたら、またあちこち乗りに出掛けて楽しみたい」。これからこの町がどんな風に進化していくか、2人で期待を募らせている。

2021年5月15日付795号2面から

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