青少年に読ませたくない、わいせつな本は家に持ち帰らず、この箱に捨てて―。1963年に兵庫県尼崎市で始まり、全国に広まったとされる有害図書類回収箱“白ポスト”の設置運動。伊賀地域には昭和の終わりごろに波及し、デジタル全盛の令和の今も現役で運用されている。【名張市の有害図書回収作業=名張駅前で】

名張「関所くん」

 名張市では、名張青年会議所(JC)が80年ごろに近鉄名張駅前などに設置したのが始まり。その後、90年代前半に市内の近鉄4駅にJCが新装設置したステンレス製の「関所くん」が今も使われている。高さ約2メートルで、前面に「悪書の関所」「ここは悪書追放の街です。悪書を持っての通行はできません。ごみは入れないで下さい」などと表示されている。

 現在、回収作業は環境浄化活動の一環としてJCを始め、市教委、市青少年補導センター、更生保護女性会の4者が月1回実施。回収点数は市教委が毎回記録している。

 2019年度の総数は423点で、うち有害図書類が289点。10年前と比べると4分の1以下に減った。市教委の担当者は「減少はインターネット普及の影響だが、有害図書が入れられなくなったわけではない」と話す。

 9月は、4か所合計で54点が回収され、うち43点が有害図書類だった。内訳は写真集と成人雑誌が計13点、わいせつDVDが30点と“悪書”より“悪DVD”の方が多いのが現状だ。

伊賀「山羊の箱」

上野市駅前にある「山羊の箱」=伊賀市上野丸之内

 伊賀市では、伊賀鉄道の上野市駅前に「山羊の箱」と呼ばれる高さ約1メートルのステンレス製の回収箱がある。「青少年の健全育成を阻害する雑誌、ビデオ、DVDなどの有害図書類を入れてください」といった箱の説明文は「関所くん」よりも詳しい。ポルトガル語、中国語、英語の3か国語による説明もある。

 年2回不定期で回収している市総合危機管理課によると、数は記録していないが、近年はほぼ何も入っていない状態が続いているという。両市とも、回収箱に入れられたものは、有害、無害を問わず全て伊賀市内のごみ処理施設に運んで処分している。現在、県内では松阪市で同様の回収箱が使われている。

2020年11月7日付783号26面から

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