生誕250年を迎えたドイツの作曲家ベートーベンに親しむコンサート「みんなでベートーベンア・ラ・カルト」が、11月15日午後2時から名張市松崎町のadsホールで開かれる。オーディションで選ばれた地元の学生ら女性7人もピアノで出演し、偉大な作曲家の世界を繰り広げる。

 広くなじみのある「エリーゼのために」「運命」から、「悲愴」「月光」「皇帝」などベートーベンを代表する計14曲を演奏予定。出演者は市村こころさん、青野馨さん、谷口晴香さん、東出実怜さん、久保真寛さん、青木宝代さん、目加田美桜さん(出演順)。ゲストはアンサンブル宙、テノール波多野均さん、ピアノ橋本宏美さん、バイオリン荒木弓佳さん他。

 入場料は一般1500円、高校生以下500円で、当日は各500円増し。チケットは伊賀地域のプレイガイドで販売している。

 問い合わせは主催のミュージックホリデイ実行委員会、菅生さん(090・3930・5568)へ。

良い演奏で一体感を「月光」演奏 青木さん

青木宝代さん

 出演者7人のうち、学生以外では名張市桔梗が丘1の青木宝代さん(46)が唯一ステージに上がる。けがで20年以上前から両足が不自由だが、アシストペダルを使って演奏を楽しみ、物心ついたころから「一番好きな曲」「一番弾きたい曲」だという「月光」第1楽章を披露する。

 大阪、兵庫を経て、小学2年の時に名張へ転居。20代前半に事故で負傷した後、リハビリをしながら大阪芸術大の通信教育部を卒業した。「手や足を無くした人からは『足があるだけで幸せでしょう』とも言われたが、一生懸命頑張っている人たちはたくさんいて、『私も頑張らないと』と思えた」。

 好きなピアノも十数年弾いていなかったが、今も習っている講師の中嶋薫さんから、踏む際の重さを軽減できるアシストペダルがあることを聞く。「また弾いてみたい」と思うようになり、ベートーベンのコンクールや地元でのコンサートなどへ精力的に参加してきた。必然か偶然か、今回のコンサートのためのオーディションの曲目には、昔からよく聞きよく弾いていた「月光」があった。

 戦前の教科書「尋常小学國語読本」には、ベートーベンが若い兄妹の家を訪ね、月の光を題材に即興で弾いた優しい調べを「月光」という曲に書き下ろす物語が掲載されている。当日は青木さんの演奏に、この物語の朗読(野上峰さん)が花を添える。母に朗読してもらいながら練習している青木さんは「出演する皆でベートーベンの世界をつくり上げる、という緊張感がある。良い演奏をして一体感を味わえたら」と語った。

2020年10月24日付782号6面から

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