耐火レンガなどを製造販売する株式会社八木萬(本社・堺市)で、苔(こけ)の生産を専門に手掛ける緑化事業部が伊賀市下柘植にある伊賀支店だ。同支店では日本庭園などで使われる「苔シート」を全国に出荷している。【ほ場にずらりと並んだ苔シートを紹介する武田支店長=伊賀市下柘植で】

 同社は2005年から、レンガのプレートを土台に、苔の一種「スナゴケ」を育成するキットの生産に着手。その後、下地材を使わずシート状にスナゴケを育てた商品を開発し、現在では下柘植地区を中心に休耕田などを活用したほ場20か所、計約5000平方メートルで栽培している。

 武田拓生支店長(42)は「苔は道端などにも自然に生えるが、品質良く育てるのは簡単ではない」と、均一に育てた苔を前に語る。

 植え付けは夏を除く年間通しての作業で、武田支店長とシルバー人材センターのスタッフ計5人で取り組む。縦約30センチ、横約60センチの箱に苔種をまいて散水し、黒い遮光シートをかぶせていく。管理する箱は4万個にも上り、成長の様子を確認しながら、入り込んだ雑草を一つひとつ間引く。約1年半育てた後、乾燥させてシート状にした苔をダンボールに詰めて出荷する。

SNSで情報発信

 武田支店長は結婚を機に愛知県から名張市薦生に移り住み、6年ほど前にこの業界に飛び込んだ。「勉強するうち、力強さや美しさに魅了された。苔の世界はとても奥が深い」と話す。数年前からは「スナゴケ屋」の名でSNSや動画投稿サイト「ユーチューブ」などで苔の魅力や適切な管理方法などを広く情報を発信している。

 日なたでの栽培に向くスナゴケと、日陰に向くハイゴケを混ぜて栽培したミックスシートも開発し、環境への適応のしやすさから、近年は人気が高まっているという。

照明兼ねた新商品も

 最近では、ガラスなどの容器の中で育てる「苔テラリウム」も注目されているといい、武田支店長は「今年中に、照明も兼ねた新商品を売り出したい。コロナ禍でも家の中で楽しめる、苔による癒やしを提案していきたい」と話している。

2020年10月10日付781号21面から