星に魅せられ、天体観測小屋を自宅庭に建設した、伊賀市希望ヶ丘東の団体職員、川島潤さん(60)は伊賀の星空を堪能している。【観測小屋の望遠鏡を紹介する川島さん=伊賀市希望ヶ丘東で】

川島さんが撮影した、いて座付近の天の川(本人提供、5月30日撮影)

大阪から移住、撮影にも熱

 岐阜県にいた中学2年の時、社会見学で訪れた天文台で星を見た感動が忘れられなかった。仲間と一緒に小さな望遠鏡で天体を楽しみ、高校では天文学部に所属した。

 都内の大学を卒業し、青年海外協力隊としてタイに赴任。就職後も27歳から約7年間、同国で勤務。日本と違った星空が観測できると期待を抱き、望遠鏡を持って赴任したが、仕事が多忙で思うように観測ができなかったという。

 帰国し大阪勤めになった35歳のころ、時間に余裕が生まれたことから、車に機材を積んで出掛け、朝までゆっくり夜空を眺めた。このころから、望遠鏡に一眼レフのデジタルカメラを付け、天体写真を撮影するようになった。1回の撮影には時間がかかり、中には日を変えて同じ天候条件を待ち、同一場所で複数回撮影したこともあったという。特に星空が奇麗な兵庫県猪名川町の大野山や奈良県野迫川村の鶴姫公園には何度も足を運んだそうだ。

 定年後の移住先を探していた2年前、伊賀市の住居を購入し、庭に天体観測小屋を作ろうと決めた。基礎は自分で造ったが、建築は業者に依頼した。その年の秋には、開閉式の天井が付いた約6平方メートルの小屋が完成。自身で改造した望遠鏡を設置し、週末になると別室で遠隔操作しながら観測、撮影を続けた。

遠隔操作の技術も向上

 昨年11月、これまで行き来していた大阪から完全移住。望遠鏡を遠隔操作する技術も向上し、快適に撮影できるようになったそうで、小屋が完成してからはわざわざ撮影に出掛けることもなくなったという。これまでに撮りためた天体写真は数知れず、いずれもパソコンで管理している。

 「今の自分の現状をリセットできるのが星の魅力」と話す川島さん。昨年はかなわなかった「天の川」の撮影にも今年はチャレンジ、今後は星雲などテーマを決めて写真を整理しながら、専門雑誌への投稿や写真展などでの発表も考えているそうだ。 

2020年6月13日付773号3面から

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