名張市平尾の宇流冨志禰神社(中森孝榮宮司)で、奈良の春日大社から譲り受けて植えたブナ科の常緑樹、「イチイガシ」のドングリが芽生え、ゆっくりと成長している。「次世代の神木に」と神社関係者は温かいまなざしで見守っている。【イチイガシの成長を見てほほ笑む中森宮司(右)と福廣さん=名張市平尾で】

伐採から5年 芽生えた種

 同神社本殿南側の県道沿いにある直径約1・2㍍の切り株は、かつて高さ約20㍍、樹齢約250年の大木で、神社の森の中で唯一のイチイガシだった。2015年に同市榊町の氏子代表になった奉斉会の福廣勝介さん(71)が幹の腐朽を見つけ、伐採を提案した。

 「神社の森の木は、みな神木。切るのは良くない」という声もあるなか、造園技術者としての経験から樹木に造詣が深い福廣さんは「キノコの一種のサルノコシカケが寄生して腐朽を広げている。このままでは台風などで道路上に倒れる危険がある」と他の会員を説得し、実行した。

 この出来事がきっかけとなり、福廣さんは親しい樹木医とともに神社内の木を一斉に調査。朽ちて幹の内部が空洞化している木などが多数見つかり、昨年5月に切った拝殿裏の高さ約30㍍のヒノキなど、5年間で約15本を伐採することになった。

幹内部が空洞化したヒノキの切り株=同

 一方、福廣さんは「神社の景観や風格を維持するため、次の世代の木もしっかり育てていかなければ」との思いを強くした。1年半ほど前、調査に加わった樹木医を通じて、同じ祭神を祭る春日大社からイチイガシのドングリを30個ほどもらい受けた。プランターに植えたところ、昨夏ごろに芽を出し、その後も順調に育っている。

 福廣さんは「神社の森を構成する木々の中に、かつてのようにイチイガシを取り戻したい。由緒ある春日大社の種なら、100年、200年先の将来はきっと堂々たる神木に育ってくれるはず」と期待する。中森宮司は「もう少し大きくなった後、神域内の良い場所を選んで植え付けたい。安心安全な憩いの場として、神社の森を皆さんと一緒に守り、育てていきたい」と話した。

2020年3月28日付 768号 1面から