実際に生きているかのように見える精巧な細工を施した「生(いき)人形」。幕末から明治にかけて活躍した人形師、初代・安本亀八(1826‐1900)が手掛けた生人形の肖像作品を調査するため、日本美術史を専門とする群馬県立女子大学の塩澤寛樹教授(61)らが名張市を訪れた。【角田家の夫妻像を調べる塩澤教授=名張市中町で】

 亀八は熊本県で仏師の家系に生まれ、1860年代前半に名張で5年ほど滞在。同市新町の医師、横山文圭氏の長屋で生活したとされ、その間の肖像作品は市内で7体確認されているという。

 3月15日の調査では、個人蔵の4体の肖像作品が、伊賀まちかど博物館「はなびし庵」(同中町)にそろい、写真撮影や採寸が行われた。

 作品は、同博物館を運営する角田家に伝わる「角田半兵衛・みか夫妻像」(高さ各約30センチ)、本町の岡村家に伝わる「岡村甚六像」(高さ約25センチ)、桜ケ丘の横山家に伝わる「横山文圭像」(同)。このうち半兵衛像は、同博物館館長の角田勝さん(77)の6代前の先祖に当たり、人形作りの基になった絵図も残っている。

 塩澤教授は「生人形の肖像彫刻は、これまで近代美術史からも仏像彫刻史からも見逃されてきた分野。今回の研究で光を当ててみたい」とした上で、「名張にまとまって残る肖像作品は、いずれも本人の依頼を受けて作ったもの。子孫の元にそのまま継承されてきた事実は、文化的な意義がある」と話した。

 調査に協力した角田さんは「亀八が手掛けた名張の生人形に注目して頂き、とてもうれしい。研究成果を楽しみに待ちたい」と期待を込めた。

2020年4月11日付 769号 20面から