「30年ぶりに蛍が飛びました。涙が出るほどうれしかった」――。6月初旬、滋賀県近江八幡市金剛寺町の環境保全団体「湧水の郷金剛寺」(大橋祥記代表)から、蛍の保護活動に取り組む名張市瀬古口の吉岡正夫さん(68)に1本の電話が掛かってきた。【水路に「友好の架け橋」の看板を立てる吉岡さん(右から2番目)と両団体の皆さん=滋賀県近江八幡市金剛寺町で】

 金剛寺町(全160戸、約540人)は昭和の名水百選に選ばれた「若宮湧水」がある集落だが、ここ三十余年は蛍が全く出現しなくなったという。同団体は、10年ほど前から生態系保全、蛍の保護・復活をテーマに掲げ、県内外への視察研修などを行ってきた。

 その一環として昨年3月、同団体の20人が名張市矢川を訪問。蛍の保護活動などで一昨年に三重県知事から優秀賞を受賞した「矢川環境保全会」(松本任夫代表)と交流した。

 同保全会は吉岡さんの指導で水路の整備や餌となるカワニナの放流・定着などに取り組んでいる。指導する吉岡さんは赤目滝周辺でゲンジボタルやヒメボタルの保護で大きな成果を上げていることから、交流会の場で金剛寺町での現地指導を要請された。

 昨年10月、現地を初めて訪れた吉岡さんは「こんなに環境の良い所なのに現れないのはおかしい」と思ったそうだが、水質検査をした結果、カワニナの殻を作るために必要なカルシウムが不足しているのではないかと直感。水路の底に貝殻を沈め、土手に有機石灰を散布し、流れの早い所にはブロック片を置くなどアドバイスをした。

今後を祈念し看板設置

 その後も、現地で数回指導を続けた結果、今年の6月初旬に待望の蛍が約40匹舞った。「皆、感激の涙でした。これからも指導を仰ぎながら、蛍が飛び交う田舎の原風景を取り戻したい」と大橋代表。

 今年の11月中旬、吉岡さんと矢川環境保全会の役員が金剛寺町を訪問。両団体の今後の交流を祈念して「蛍再生プロジェクト――ホタルによる友好の架け橋」と書かれた看板を水路に立てた。吉岡さんは「毎年蛍が乱舞するよう努力を続けてください」と激励した。

2019年12月7日付 761号 26面から

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