患者や家族として、がんとどう向き合うかを考えるシンポジウム「第10回名張で学ぶがん医療」が11月28日、名張市松崎町のadsホールで開かれた。日本対がん協会会長で医師の垣添忠生さん(78)が自身の体験を交えて発病の仕組みや予防の重要性について講演した他、患者や専門家を交えたパネルディスカッションがあり、約600人が耳を傾けた。【意見を交わすパネラーら=名張市松崎町で】

講演する垣添さん=同

 このシンポジウムは市がん・難病相談室専任相談員の広野光子さん(78)の発案で、6月に立ち上げた実行委員会が中心となって開催した。国立がん研究センター名誉総長でもある垣添さんは、自身も大腸がんと腎臓がんの患者だった。2007年に最愛の妻を小細胞肺がんで亡くし、「つらく、浴びるほど酒を飲む時期があった」と喪失感に苦しみ、09年に著書「妻を看取る日」(新潮社)を執筆。妻の死が、死を恐れなくなるほど人生観を変えたと振り返った。妻の希望に応じ、最期を自宅でみとったことは「本当に良かった」と、在宅医療の充実やがん検診の普及も訴えた。

 パネル討論では垣添さんら4人が出席。三重大医学部看護学科教授の辻川真弓さん(59)は「健康な時から、自分が病気になったらどうしたいのかを家族と話し合うべき」と指摘し、胃からリンパ管へのがん転移を経験した三菱製紙元専務執行役員の井口政明さん(72)は「仕事ばかりの頃、自分はがんと無縁だと思っていた。宣告され初めて死を意識した」と振り返り、闘病体験を語った。

 垣添さんは「自分自身のがんは治る可能性があると分かっていたので、動揺は無かった。正しい情報を持つことが重要」と述べ、「2人に1人ががんになると言われるが、65%くらいの人が治るようになってきている。10年もしたら、がんがごく普通の病気の一つになるはず。一刻も早く実現するよう、私の残された人生頑張ろうと思う」と締めくくると、会場は大きな拍手に包まれた。