伊賀市と芭蕉翁顕彰会は10月5日、俳聖・松尾芭蕉の遺徳を偲び募集した献詠俳句など特入選939作品を発表した。特選は72作品で、10月12日の命日に伊賀市上野丸之内の上野公園俳聖殿前で開催する第72回芭蕉祭の式典で披講、献額される。

 投句数は一般の部8165句、テーマの部1709句、児童生徒の部2万4701句、英語の部414句、連句の部119巻の計3万5108作品が寄せられ、昨年よりも1649作品少なかった。絵手紙の部は応募数が90点増の787点だった。

 児童生徒の部は保育・幼稚園21施設、小学校39校、中学校28校、高校3校で、伊賀市内の公立小中学校31校全てから投句があった。一方、伊賀・名張市内の高校からは1句も寄せられず、市外からの投句数も昨年の1138句から148句に減った。

 英語の部では国内からも含め、19の国と地域から応募があり、上位は日本77句、米国57句、クロアチア37句、ルーマニア37句、インド32句の順に多かった。また、学校全体で俳句づくりに取り組み、その成績が優秀だった学校を表彰する「三重県知事賞」には地元の島ヶ原小と緑ヶ丘中が受賞した。

 各部門の特選句は次の通り。敬称略。

◇一般の部◇
【有馬朗人選】
天山ははるかに聳え蟻の道(兵庫県猪名川町、小林恕水)
地蔵会や遥かに月の小倉山(名古屋市、光田道子)

【稲畑汀子選】
伊賀の地に想ひを馳する翁の忌(横浜市、松永朔風 )
母の日やすぐ泣く母の手を握る(岡山県倉敷市、木村英一郎)

【茨木和生選】
生身魂船幽霊は夫と言ふ(四日市市、長田久子)
好きなひとをるかと問はれ稽古海女(志摩市、尾﨑亥之生)

【宇多喜代子選】
観覧車六月の青掬ひけり(東京都江戸川区、中村光声)
雷ひとつ牛は肩より立ち上がる(名古屋市、小沢芳治)

【小澤實選】
枇杷熟れぬ宗房書見蔀上げ(東京都調布市、片岡昌子)
建造中武蔵四百屯に簾(東京都杉並区、嶋田恵一)

【鍵和田■子選】■は「禾」に「由」
海鳴りや魂は還らず鵙の贄(東京都町田市、小田中柑子)
動くたび赤子のひかる今朝の秋(志摩市、廣波青)

【黒田杏子選】
老海女の西瓜抱へて高笑ひ(志摩市、浜口久美子)
父の日や兜太先生其処に居り(新潟県長岡市、安木沢修風)

【坂口緑志選】
雨雫烏帽子に光る夏越かな(岡崎市、三浦葵水)
木天蓼の咲いて斎王群行路(愛知県稲沢市、日比孝子)

【塩田薮柑子選】
接戦を制し球児の夏終わる(兵庫県姫路市、中野万知)
生活断つ豪雨の惨禍夏猛る(伊賀市、川瀬勝子)

【棚山波朗選】
水鶏鳴く声に暮れゆく近江かな(奈良市、渡辺政子)
借景は伊賀の山並大茅の輪(伊賀市、西野登志子)

【西村和子選】
また一歩未来へくぐる茅の輪かな(青森県八戸市、三浦成子)
宿坊の一ト間に踊り支度かな(愛知県西尾市、齋藤佳織)

【長谷川櫂選】
初鏡この世にひとつだけの顔(愛知県日進市、戸田絢子)
泉まだ生まれしままの姿なり(横浜市、三玉一郎)

【星野椿選】
素十忌やともに渦見し日の遠し(徳島県鳴門市、三栖ツユコ)
祇園会や長子ならねど太鼓打つ(伊賀市、岡島千秋 )

【正木ゆう子選】
水切りを教へて帰す夏休み(和歌山県有田川町、今井善衛)
羅を着て宵つぱり意地つぱり(愛知県岡崎市、中根由起子)

【三村純也選】
面打の鑿の音ある夜長かな(奈良市、池田雪彦)
春陰の書棚に探す本のなく(堺市、伊藤とし子)

【宮坂静生選】
蛸壺にまどろむ月日半夏生(紀北町、湊章治)
獰猛な引き目の小さき大鯰(名張市、今堀敬一)

【宮田正和選】
草笛の歌にならねど歌ふなり(志摩市、松村正之)
ゆつくりと今が過ぎゆく沙羅の花(伊賀市、米野てるみ)

◇テーマの部=「雪」◇
【片山由美子選】
吹雪く夜は誰も無口となりにけり(東京都世田谷区、石川昇)
淡雪のかたち何かに触れるまで(大阪府枚方市、藤田康子)

◇児童・生徒の部◇
【保育園(所)・幼稚園・小学校1~3年=喜多冨美、坂石佳音、永井みよ、東構東子、福山良子共選】
はねのおとあそこにせみがかくれてる(曙保育園、市川滉人)
はのうえでにんじゅつつかうかまきりだ(睦保育園、山本耕輔)
なすびってたねはあるのたべてたよ(みどり保育園、杉本悠真)
こおろぎがあそびにきたよよるのまど(伊賀市立上野東小学校1年、山西瑛里奈)
はんかちのなかでほたるがひかってる(伊賀市立上野西小学校1年、松本啓)
かぶとむしもりのにおいがついている(伊賀市立西柘植小学校1年、なかむらかふう)
ひまわりにベートーベンのかだいきょく(伊賀市立上野東小学校2年、其道侑士)
ながれぼし一っぽんばしのむこうがわ(伊賀市立依那古小学校2年、森岡裕)
ぎんやんま七十キロでとんでいる(伊賀市立神戸小学校2年、上ノ本愛彩)
買物のおつりをぼ金赤い羽(伊賀市立上野西小学校3年、片山遼)
しあいの日にじを見つけたかてるかも(伊賀市立府中小学校3年、森真寧)
カレンダーなつのぼうけんつめこんだ(伊賀市立依那古小学校3年、西岡詩織)

【小学校4~6年=岡島千秋、北村みち、佐々木経子、西村八洲子共選】
ばあちゃんの畑は夏のたまて箱(伊賀市立上野東小学校4年、高田莉瑚)
妹の産まれた夜の豆御飯(伊賀市立上野西小学校四4年、山口夢叶)
国道にかかる二重の虹くぐる(伊賀市立阿山小学校4年、隠岐春菜)
海釣りで見上げた空はうろこぐも(伊賀市立友生小学校5年、中川媛華)
語り部を引きつぐ祖母や原ばく忌(伊賀市立壬生野小学校5年、坂本結大)
真っ青な空にぐんぐん雲の峰(江東区立扇橋小学校5年、金井恵美)
山上の城あおぎ見るう飼舟(伊賀市立上野西小学校6年、冨知優)
かわられた先生見つけた運動会(伊賀市立新居小学校6年、福田晴翔)
一等星夏の夜空の覇者になる(伊賀市立西柘植小学校6年、中林叶)

【中学校・高校=下村哲朗、土井陽代、浜地和恵、藤井充子、山村勝子共選】
アスファルト雷雨打ち付け跳ね返る(伊賀市立緑ヶ丘中学校1年、今井湊太)
汗にじみかすんで見える得点板(伊賀市立緑ヶ丘中学校1年、吉原匡洋)
欄干に糸を張り出す朝の蜘蛛(東京都港区 高輪中学校1年、佐々木悠)
母さんが小さく見えた新学期(伊賀市立緑ヶ丘中学校2年、松岡大夢)
合宿で走る山道草いきれ(伊賀市立城東中学校2年、森口伊吹)
和太鼓の音で始まる盆おどり(伊賀市立霊峰中学校2年、佐古智也)
運動会マイク握れば標準語(伊賀市立緑ヶ丘中学校3年、田場雄羽太)
炎天を走ってつかめ優勝旗(伊賀市立島ヶ原中学校3年、川南心美)
体育会そろいの靴や五月晴れ(福岡県直方市立直方第二中学校3年、出口こころ)
数学の難問を解く梅雨晴間(三重県立紀南高等学校3年、平樹)
もろこしをかじり笑顔の輪となりぬ‘愛知県立安城高等学校3年、石原舞子)

◇英語俳句の部◇
【河原地英武選・訳】
statue of Basho
carrying favorite stick
spring breeze
春風や常の杖曳く芭蕉像(鈴鹿市、吉田博實)

refugee camp –
in the wandering wind
a paper plane
難民の紙飛行機が高空へ(ルーマニア、イウリアン・シウピウ)

◇連句の部◇
【青木秀樹、靜寿美子、鈴木漠、西田青沙共選】
半歌仙『浮世の』の巻(兵庫県、つばさ連句会、八尾暁吉女捌)

旅寝して見しや浮世の煤払ひ    芭蕉翁
 耳元ちかく冬の波音        八尾暁吉女
カフェテラスカラフルな椅子並ぶらん   城依子    
 﨔大樹は枝を広げて          斎藤桂
まんまるの月に願ひて描く夢     岡部七兵衛
 身ほとりのものなべて爽やか       依子
村芝居石屋の親父名女形         暁吉女
 尼僧も混じるバックコーラス      七兵衛
頁繰る細きあの指気にかかり         桂
 大型犬はのほほんとして        暁吉女
栄町路面電車が停車する          依子
 ビール次々月に乾杯            桂
激論に汗の飛び散る午後八時       七兵衛
 国の未来を誰に託さん          依子
風の向き右も左も定まらず        暁吉女
 ふはりひらりと春のスカーフ      七兵衛
矍鑠と卆寿の恩師花の下          依子
 間々に聞こえるうぐひすの声        桂

平成三十年五月二十六日 満尾 インターネット掲示板

◇絵手紙の部◇
【森田満江、福北辨選】

(奈良県斑鳩町、宮地政弘)