旧滝之原小学校(名張市滝之原)の給食棟を改修してできた「隠(なばり)タカラモノ農産加工所」が、今年の4月で事業開始から2年目を迎える。【イーナバリの杉岡代表(左)と企画・営業担当の平田愛さん】
2014年から同市の農産加工品「隠タカラモノ」を開発することで雇用拡大を図ってきた同市雇用創造協議会が3年間の事業試行期間を終え、昨年1月に新会社「イーナバリ株式会社」(杉岡雪子代表)を設立。同協議会の元職員ら3人がノウハウや販路を受け継いで加工所を運営し、特産品開発に取り組んでいる。

加工所は平屋建て88平方メートルで、洗浄や殺菌を行う下処理室、加熱処理や切り分け作業をする加熱調理室、それに乾燥や粉末処理、梱包作業を行う加工室が2部屋ある。

事業内容としては、まず農家からの要望に基づき、野菜や果物の乾燥、粉末化、レトルト処理、ペースト化などの一次加工を行っている。次に、規格外の農産物などの加工を小ロットで受託し、オリジナル商品として開発している。

具体事例として、近年新たに就農した、同市短野の北島芙有子さん(25)が生産した完熟トマトをペーストにしてケチャップやドレッシングに加工し、市内のスーパーや精肉店などに卸している。また同青蓮寺の観光農園「栢本園」のブドウやイチゴをジャムやコンフィチュールに加工し「初恋シリーズ」として販売し来園客に人気を博している。

 更に同市赤目町柏原の「手づくり農園」のサツマイモを「干し芋」に加工=写真。化学肥料や農薬を使わず育てたシルクスイートは柔らかい食感で、添加物を使わない安全性も好まれ評判だという。

加工所としての自社ブランド商品の開発・販売にも力を入れている。だし汁とみそを入れて沸騰させた鍋にそのまま入れるだけで地元野菜たっぷりの味噌汁ができる「乾燥やさいミックス」は保存性が良く直売所などで人気だ。更に山梨県のワイナリーのワインの搾りかすを使った肉専用の高級ソムリエソース2種や万能塩(ソルト)3種を開発しており、インターネットで販売している。今年7月からは同市国津地区に開設予定のワイナリーから地元産の素材を調達する予定だという。

杉岡代表は、「小規模な農家は農業と加工、販売の両立が難しく、6次産業に関心はあってもなかなか参画できない人が多かった」とし、「加工所は1年が経ち、受託や自社製品が20品種を超え、販路も徐々に広がっています。農家の方の強い思い入れを受け継ぎ、加工所が行政や流通との橋渡し役になり、付加価値の高い加工や販路開拓の手助けをしていきたい」と話した。

2018年3月24日付720号12面から

- Advertisement -