180111_11.jpg がん闘病中、筆ペン一本で文字を描き、思うままに自分を表現する「己書(おのれしょ)」と出会い、生きがいを見つけた名張市蔵持町芝出の己書家”多田美幸さん。日本己書道場の公認師範資格も取得し、新しい年に活動の域を広げようとしている。


 2015年春、多田さんに胃がんが見つかった。手術で胃の3分の2を切除したものの、リンパ節への転移があり、退院後に抗がん剤治療が始まった。吐き気やめまい、脱力感などの副作用が続く、つらい毎日だった。

 翌16年1月、いとこが己書の師範だと知る。その作品に目が釘付けになり、「やりたい」と強く思ったという。闘病生活が続くなか、いとこが開く鈴鹿市の教室に通うことになった。不思議なことに、学んでいる「幸座」の最中は、集中力と楽しさが勝り、つらさと吐き気が減っていたという。

元気の源

 多田さんの己書は、自分で考えたり、書籍や勉強会からの引用もある。インスピレーションで沸いたものを、四隅を空けて字体を真ん中に寄せ、丸みを帯びた文字で隙間のないように仕上げる。創作する楽しさのせいか、3か月ごとの検査通院は続くものの、体調も順調に回復し、定期健診の結果も良好だそうだ。「己書がなかったら、自分はどうなっていたか分からない。自分の支えでもあり、元気の源」と笑顔を向ける。

いつかは個展も

 現在は「己書ゆき楽道場」の名で伊賀と名張のカフェを会場に講座を主宰する。「夢はいつか個展を開くこと。己書でたくさんの人を笑顔にしたい」。新年は、フランス・パリで開かれる「ジャパンエキスポ2018」へ己書のスタッフとして参加も予定している。

2017年12月23日付714号1面から