「産科やめる」「伊賀市民だけ」うわさを否定 森川病院

森川病院の外観=伊賀市上野忍町

 三重県伊賀地域で唯一、分娩を扱う森川病院(伊賀市上野忍町)を巡り、「伊賀市民しか診てもらえない」「近く産科をやめる」といったうわさが広がっているという。森川文博院長はYOUの取材に「そのような事実は一切ない」と否定し、受け入れ体制の現状を語った。

 同院には地域住民から「本当に受け入れてもらえるのか」といった問い合わせも寄せられているそうだ。森川院長は「うわさを聞いて、不安を抱いている人がいるのではと心配。間違った情報で混乱を招かないよう、きちんと正しい情報を伝えたかった」と、今回の取材に応じた心境を明かした。

森川文博院長

 伊賀地域では2025年初め、伊賀市と名張市の医療機関各1院が相次いで分娩の取り扱いを終了した。現在、伊賀地域で分娩を受け入れる医療機関は森川病院のみとなっている。

 分娩施設が1か所となった当初は、現場も慌ただしかったという。森川院長は「一気に患者さんが集中し、昨年は予定外の対応も多くてバタバタした。しかし今年は、落ち着いて予定が立てられるようになってきた」と振り返る。

 同院では従来から、低リスクと中リスクの妊産婦の分娩を担い、ハイリスク妊娠については三重大学医学部附属病院などと連携して対応している。

 昨年の分娩件数は月平均約45件。今年は少子化の影響もあり、やや減少しているといい、52床ある病床にも一定の余裕がある。森川院長は「現在の体制で十分受け入れられている」と説明する。

 「伊賀市民しか診ない」といううわさについては、「そんなことは絶対にない。医療機関としてあり得ない」と否定。伊賀市内はもちろん、名張市や周辺地域からの妊婦も、これまで通り受け入れていると強調した。また、「もうすぐ産科をやめる」といううわさについても、「その予定は全くない」と明言した。

地域の周産期医療 支える体制強化

 森川病院では地域の周産期医療を維持するための体制強化も進んでいる。現在は森川院長と妻、長女の常勤医師3人と非常勤医師が産婦人科診療を担うが、10月には三重大から常勤医師1人が派遣されることが決まっている。更に、英国のケンブリッジ大学で胎児治療を専門的に研究している長女の夫も2年後の春に加わる予定で、将来的には常勤医師5人体制となる見通しだという。

 「県も大学病院も、この地域をしっかり考えてくれている」と森川院長。支援への感謝を口にし、「地域の拠点として役割を果たしていきたい」と力を込めた。

 同院では、一般不妊治療及び体外受精などの不妊治療によって年間約100人が妊娠に至っているという。出生前診断や無痛分娩にも対応しており、医師の増員に合わせて診療体制を更に充実させる方針だ。

 森川院長は「最低でも一つは、お産ができる場所をこの地域に残さなければならない。それが地域の将来につながる」と語る。

 1961(昭和36)年に開業した同院の将来を託すのは、後継者となる長女夫妻だ。「若い2人が、この地域のことを考え継承すると言ってくれた時は、本当にうれしかった。でも、これからもっと大変な時代になるので、複雑な気持ちもある」と率直な思いを明かす。その上で、「当院で少子化、人口減少に対してできることは限られているが、それでも地域の未来のために頑張っていきたい」と話した。

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