【「FUKUI Fマート」の外観】

商店街で長年営む地域密着コンビニ

 三重県名張市桔梗が丘1番町の商店街にある「宝くじ ふくい」が7月24日(木)、地域密着のミニスーパー「FUKUI Fマート」として生まれ変わる。店主の福井信一さん(67)は「商いは人と人との信頼で成り立つ」と語り、人生を賭けた挑戦に乗り出す。

 店は1964年、造成開始から間もない桔梗が丘で、福井さんの父賞三さんと母都子さんが「福井商舗」を開いたのに始まる。伊賀で酒造業を営む家に生まれた賞三さんと、商人の町「大阪船場」の酒問屋に育った都子さんが手を取り合い開いた店は、酒や食品、日用品などあらゆる暮らしの品を取りそろえ、地域に根を下ろした。

 大学在学中の18歳から店に立った福井さんは、23歳だった1980年に業態転換を提案。「コンビニ」という言葉がまだ定着していない時代に、コンビニチェーン「モンマートふくい」として刷新した。早朝から深夜まで営業する小売店は珍しく、地元の話題をさらい、初日の売上は200万円にのぼったという。「三重で初めてのコンビニだった。何でもあり、いつでも開いている店は他になかった」と福井さんは当時を振り返る。

 時代とともに「ココストアふくい」「タックメイトふくい」へと看板を替えながらも、手づくりにこだわる姿勢は変わらなかった。店内調理の弁当や総菜はどこか懐かしく温かい味で、多くの固定客をひきつけ、大手チェーンが進出しても地元に支持され続けた。

 しかし、長年の無理がたたり、福井さんの体にがんが見つかった。追い打ちをかけるようにコロナ禍が襲来し、体力的にも経営的にも厳しい状況に陥り、店内調理を断念して宝くじ販売を主とする形へ事業縮小を余儀なくされた。

きっかけは母の姿

 そんな中、福井さんを再び立ち上がらせたのは、賞三さん亡き後も店を守り、昨年3月に97歳で亡くなる最期の日まで店に立ち続けた都子さんの姿だった。母の死から半年後に大阪船場を訪れた福井さんは、「船場商人の精神で商いをもう一度やってみよう」と決心した。

思いを語る福井さん(左)と一江さん

 今回のリニューアルで掲げたのは、「地域に溶け込む近未来型小型ミニスーパー」というスタイル。車社会が主流の地域の中、運転ができない高齢者にとって徒歩圏内のスーパーは貴重な存在で、Fマートはそうしたニーズに応える「ライフライン」を目指す。

 仕入れは全国ネットの全日食チェーンに加盟し、大手スーパーに劣らぬ低価格で提供する。地元農家5軒と直接契約して採れたての野菜を並べる他、肉や魚、愛媛からの直送フルーツも店頭に並ぶ。更に、身体に悪影響を与えるとされる超加工食品を極力排除し、健康的で安心な食材を中心に販売する。

船場商人の精神

 福井さんが目指すのは、首都圏中心に展開するイオングループの「まいばすけっと」のようなミニスーパーの名張版。「地域の人が毎日通える、暮らしに寄り添うスーパーにしたい」と意気込む。

 もう一つ、Fマートの特徴は「人がいる店」であることだ。今や多くの店がセルフレジを導入して効率化を追求するが、福井さんは「人との会話こそが商売の本質」と強調する。「レジ越しの会話が時に地域の情報となり、時に支えとなる。そんな場が今の世の中にこそ必要だ」と話す。

 妻一江さん(65)は栄養士資格を持ち、福井さんも介護食士や惣菜管理士などの資格を有する。健康や食生活の相談にも応じ、「地域をつなぐ拠点」を目指す。

 リニューアルに向け日本政策金融公庫から融資を受け、冷蔵ショーケースを4台新設し、看板なども一新。Fマートは、見た目も中身も新しい店へと生まれ変わる。

 「大きな店じゃないが、人と暮らしに一番近い店になる。未来の暮らしにフィットする、新しい買い物スタイルとして認めていただける店になりたい」。福井さんの目には、船場商人の精神を受け継ぐ覚悟が宿っている。<PR>

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