『人生100年時代』のセルフケアを支える
1919年創業の医薬品メーカー「中外医薬生産株式会社」(本社・三重県伊賀市ゆめが丘7)が同市西明寺で建設を進めてきた「みどりヶ丘第三工場」が、10月19日に完成する。約100億円を投じた大型設備投資で、2027年3月に生産を開始し、夏ごろの本格稼働を目指す。
同市に本社と工場を置き、一般用医薬品(OTC医薬品)などの研究開発、製造を手掛ける。
新工場建設の背景には、自分の健康を自分で守る「セルフケア」への関心の高まりがある。田山林太郎社長(46)は「人生100年時代のセルフケアを推進するため、必要な医薬品を全国に届けることが大きな目的。自分自身、40代のうちに思い切ったチャレンジをしたいという思いもあった」と説明する。風邪薬にとどまらず、医療用医薬品から転用される「スイッチOTC医薬品」の品目が今後さらに増え、セルフケア向け医薬品の需要は一段と伸びるとみており、「AIやデジタルで社会が変わっても、人の健康に関わる部分は変わらず必要とされる」と話す。

新工場は名阪国道を挟み、既存の第一、第二工場と向かい合う位置に建設。敷地面積9447平方メートル、建築面積3074平方メートル、延床面積8009平方メートルの鉄骨造3階建てとなる。既存の工業団地に拡張余地がなく、別地域への進出も検討したが、地域貢献の観点から地元での建設を選んだという。
錠剤などの固形製剤を中心に製造し、年間20億錠、製品包装換算で約2000万箱の生産能力を計画。OTC医薬品大手の第一三共ヘルスケアをはじめとした大手製薬メーカーからの受託製造に対応し、全国的に知られるブランド医薬品の製造を担う予定だ。
瓶の自動供給や錠剤充填、乾燥剤の封入、キャップ装着、箱詰め、梱包など一貫して自動化するラインを導入し、従来ラインと比べて3倍の生産性向上を見込む。人は検査や機械の調整などを担う。田山社長は、機械に任せられる仕事は機械に、人は人にしかできない仕事をするという考えを示し、付加価値の高い仕事には重点的に人の力を活用する方針だ。
新工場には太陽光発電設備も設置。年間発電量は約38万7000キロワット時を計画し、年間約127トンの二酸化炭素排出量削減を見込む。既存工場との連携も進め、生産や物流の効率化を図る。
設備だけでなく「人」にも投資
10月19日の完成後は、設備の試運転や製造条件の確認などを進める。生産開始は2027年3月を予定し、夏ごろの本格稼働に向けて生産体制を整える。
新工場の稼働に伴い、同社は今後3年間で約50人の新規採用を計画している。研究開発部門を含め、各分野で理系人材も確保する方針だ。
また、同社は来年から3年連続で5・5%の賃上げを目指す方針を掲げている。田山社長は「設備への投資だけでなく、人への投資も必要。賃上げができない会社は、これから生き残れないと思っている。生産性を高め、その成果を社員に還元していきたい」と話す。
県内では今後、人口減少に伴う地域の担い手不足が課題とされる中、田山社長は「雇用の受け皿として機能していきたい」と地域への思いを語る。今後は大手製薬メーカーとの提携による受託製造もさらに拡大し、「OTC医薬品の開発から製造まで一貫して手掛けるODM企業として、日本一を目指したい」と展望を語った。
医薬品づくりの最前線
若手研究員、新工場に挑む
研究開発本部研究センター製剤研究チームに所属する廣瀬雅望さん(27)は、入社3年目。上野高等学校理数科を卒業後、福井大学工学部物質・生命化学科に進学。同大学院で産業創成工学を専攻した。幼い頃から「ものづくり」に興味があり、パズルなど手を動かして形にするのが好きだった。
就職活動では「自ら関わった製品で人の役に立ちたいという思いがあり、多種多様な医薬品を扱えるOEM(受託製造)メーカーの研究職を志望した」と振り返る。中外医薬生産の第二工場が建設される様子を目にし、地元でやりたい仕事ができる会社があると知って入社を決めた。
現在は、ドリンク剤や錠剤などの有効成分や添加物の種類、配合量、製造方法などを検討する医薬品の研究業務を担当している。さまざまな条件で試作を重ね、有効成分の安定化や量産化に向けた製造条件の提案も行う。試作で得られた傾向が工場の設備で再現されるとは限らず、製造規模による違いを見極めながら最適な製造条件を探っていく。「想定通りにならないことがほとんど。試行錯誤しながら高品質な製品を安定して製造できる条件を確立することにやりがいを感じる」と話す。

チームには若手が多く、最近は後輩の指導も任されるようになった。「自分が入社したときのことを思い出しながら、分かりやすく伝えることを大事にしている」と話す。
第三工場の本格稼働に向けた新製品の製造条件検討にも取り組んでおり、「新工場の立ち上げに関われることは貴重な経験」と意気込む。
ドラッグストアで自身が関わった製品を見かけると、つい手に取ってしまうという。「自社品開発だけでなく、大手の商品開発にも携われることに楽しさを感じている」と語る。地元の若者には、「伊賀にいながら、全国につながる仕事があり、人々の暮らしや健康を支えられる。地元での働き方にもさまざまな可能性があることを知ってほしい」とエールを送る。〈PR〉
〈中外医薬生産株式会社はスタッフを募集しています。詳細はこちら〉









