伊賀保健所管内で新型コロナウイルス感染者が確認されて2週間。3月23日までに三重県では9例の感染者が確認されている。感染症対策を実施している同保健所の島田晃秀所長にインタビューした。【インタビューに応える島田所長＝伊賀市四十九町で】
2009年に世界的に猛威を振るった新型インフルエンザが流行した際、島田所長は津保健所で感染症対策の担当をされていたと聞きました
「今後どういう状況になり得るかというイメージが持てたという点で、当時の経験が役立っています。当時の新型インフルエンザに関しては簡易検査キットや治療薬のタミフルもあり、対応しやすい部分も多かったと思います。しかし、今回は簡易の検査キットも無く、治療薬も無い。ウイルスの潜伏期間も長く、症状も普通の風邪と区別がつかないので、医療現場での対応に大変苦慮しています」
現在の状況を説明してください
「伊賀地域では、6人の感染が確認されています。この方々と接触のあった41人に対してPCR検査を実施し、全員陰性であることが確認されています。うち、特に濃厚な接触のあった21人については、最終接触から2週間、自宅待機をして頂き、健康観察を実施しています」
感染した6人と濃厚接触者21人は、今どのようにして過ごしているのですか？
「感染された方は感染症指定医療機関（県内では7か所指定）で入院されています。また、濃厚接触者の方は、出来るだけ外出を控えて頂き、毎朝夕の体温と体調変化はないかなど、保健所が電話で確認しています」
自宅待機の人の家族との接触や勤め先などへの対応は?
「健康観察の期間は、部屋を分けるなど、家庭内でもなるべく家族との接触を避けて頂いたほうが良いでしょう。仕事に関しては勤め先と相談して頂いて、在宅勤務などで出勤を控えて頂くようお願いしています」
PCR検査はどこで実施していますか? 現在の件数も教えてください
「主に帰国者・接触者外来（各地域に設置、非公表）を設置している医療機関で診察の上、検体を採取します。検体は四日市にある県保健環境研究所に搬送し、検査が実施されています。1月30日から3月18日までに県内全体で301件のPCR検査を実施し、陽性9件、陰性292件となっています」
伊賀保健所の態勢は?
「保健所全体では23人の態勢です。うち感染症担当部署は4人態勢ですが、現在は保健所の総力を挙げて対応しています。感染者が確認された後しばらくは、県庁からも応援を派遣してもらい、不眠不休で対応しました。患者発生後、相談件数が急増しており、他部署からの応援も出して頂いていますが、態勢維持が非常に厳しい状況です」
陽性と診断された人はどの段階で入院するのですか? 費用は誰が負担するのですか?
「現在のところ、PCR検査で陽性となり、確定診断された方は感染症指定医療機関に入院して頂くことになっています。陽性が確認された段階で、速やかに入院する医療機関の調整を行い、準備が整い次第、入院して頂きます。感染症法に基づく入院となりますので、医療費については公費で賄われます」
県内の新型コロナウイルス感染者に対応できるベッド数は?
「県全体で24床です。感染が拡大し、感染症病床だけでは対応できなくなった場合に備えて、結核病床の活用や一般病床での対応についても検討されているところです」
濃厚接触者であることは、誰から連絡があるのですか?
「感染が判明した場合、保健所は感染された方の行動歴などを調査し、接触があった方々をリストアップします。その中から、接触の状況や時間などを分析、濃厚な接触があったとされる方を特定していきます。濃厚接触者と特定された方については、電話などで連絡を取らせて頂き、保健所からその後の対応などについて説明をさせてもらいます」
家族に経過観察の人がいる場合、どこまでの範囲の人に知らせたらいいのですか?
「感染拡大防止のために知っておく必要がある方になると思いますが、無用な風評被害を避けるためにも、必要最小限にするべきと考えています」
今後どのように推移すると思いますか?
「今のところ県内では市中感染と思われる例は確認されていません。大阪府や愛知県などでは市中感染と思われる例が出てきているので、今後県内でも市中感染例が出てくる可能性はあると考えています。県民の皆さまには、不特定多数の人が集まる場所を避けたり、部屋の換気をこまめにするなど、感染リスクの高い環境を避けて頂くことや手洗い、せきエチケットの徹底をお願いします」
「最後に、感染された方は被害者であり、大変つらい思いをしています。個人を特定しようとしたり、攻撃するような行為は厳に慎んで頂きたい。誰もが感染する可能性があるということを忘れずに、配慮ある行動をお願いしたいと思います」
2020年3月28日付 768号 1、15面から
