世界的な抹茶ブームが、伊賀の茶業にも影響を及ぼしている。訪日外国人観光客(インバウンド)の増加などを背景に抹茶の需要が急増し、原料となる「てん茶」の生産へ切り替える産地が増えたことで、煎茶の生産量が減少。茶葉の価格高騰や品薄が続いている。
全国茶生産団体連合会の調査によると、全国の煎茶生産量は2008年の6万3544トンから23年には3万8418トンへと約6割に減少。一方、てん茶の生産量は08年の1452トンから23年には4176トンへと約3倍に増加した。抹茶を使った菓子やラテなどが人気で、海外でもその風味や魅力に注目が集まっていることが背景にある。
三重県伊賀市上野小玉町の老舗茶屋「むらい萬香園」の店主、村井元治さん(73)は「今年は茶葉の仕入れ価格が昨年の約3倍まで上がった」と話す。取引先の製茶問屋からは、インバウンド需要の拡大による抹茶原料価格の高騰に加え、物流費やエネルギー価格の上昇も重なり、「企業努力だけでは品質と安定供給を維持することが難しい」と説明を受けたという。
茶農家の担い手不足も深刻だ。村井さんによると、かつて約30戸あった市内の茶農家は現在1軒のみとなった。茶畑は急な傾斜地での作業や中腰での作業が多く、体への負担が大きいことも担い手不足の要因になっているという。
中国メディアによると、海外での抹茶人気を背景に中国での生産が本格化しており、現在は世界の抹茶生産量の約7割を占めるとされる。それでも、日本産の抹茶へのニーズは依然として高いという。
村井さんは「店を訪れる外国人観光客は、お茶だけでなく茶碗や作家にも詳しく、目利き。市内の茶道教室にも外国人の参加が増える一方、日本人の受講者は減少傾向にある」と話す。
また、「急須」を知らない若者がいることにも驚いたといい、世界的な抹茶ブームの一方で、日本人のお茶離れが進んでいることに違和感を覚えるという。村井さんは「不本意ではあるが、中国生産の抹茶が世界に流通し、日本国内の流通量が確保できれば」と複雑な心境を語った。








