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使い切り予算? 議会と行政は違う? 名張市議会編

2台目のパソコン 3着目の防災服 年度末に時代小説

 名張市議会の2012年度政務調査費(政調費)の収支報告がまとまった。政調費は調査研究の経費として、議員に支給している交付金。会派支給の同市議会は議員1人当たり月4万円(年間48万円)。議員20人の交付額は960万円で、会派負担分を含めた支出額が計914万6235円。執行率は前年度比3・5ポイント増の95・3%で、市に返還した残額は67万9515円だった。

交付額960万円 返還額68万円

 元は税金の政調費を伊賀・名張両市議会の議員はどう使ったか。YOUは情報公開請求で領収書などの資料を取り寄せ、気になる点を各会派や議員、政調費制度がない熊野市を除く県内13市議会に取材。前回は伊賀市議会を取り上げた。

香典袋代を請求

 名張市議会では7つある使途項目の資料作成費で、清風クラブ(5人)の70代男性議員が使用不可の慶弔費に該当する香典袋代計652円を請求していた。議会事務局に取材した1週間後、同議員は現金で市に返還。事務局も収支報告書を修正した。

 資料作成用の主な事務機器購入では、公明党(4人)の40代男性議員が出張・移動用にタブレット型パソコン代7万4300円を請求。2010年にパソコンを買った同会派の40代女性議員は、今任期中で2台目となるノート型パソコン3万1600円を購入した。理由は「会派所有のプロジェクターにつなげて使うため」。

 交付額を使い切ったのは無会派を含む6会派のうち、240万円の心風会(5人)と144万円の清流クラブ(3人)。心風会の50代男性議員は夏用防災服代として3097円を請求した。同市議会は2年前、議会費で夏冬用を全員に支給。同議員は昨年度にも政調費で「着替え用」として防災服代を請求していた。

 清流クラブの60代女性議員は年度末の3月13日から28日までに「今日の治療薬2013年版」や歴史小説「洛中洛外画狂伝狩野永徳」など4冊の書籍代計8800円を
請求。同月20日にはシュレッダー2万4400円も購入した。

 かつて、不用な備品などを年度末に購入し、議会から「予算の使い切り」を厳しく指摘された自治体も多い。取材に対し、この女性議員は「使い切りという意識は全くなかった。偶然いい本を新聞広告で見つけたので購入した」と説明した。

 「予算の使い切り」については、議会と行政は違うという意見もあった。ある議会の関係者は官庁や行政が単年度主義であるのに対し、「議員の場合は任期で捉えるべきで、認められた期間内なら全く問題ない。肝心なのは、年度末に関係なくどれだけ市政に反映したかだ」と話す。

「透明性の後退」との指摘も

昨年度から追加「日常の旅費」

 2012年度の政務調査費から、名張市議会は近隣への視察や会議出席などにかかった交通費などを「日常的な政務調査活動の旅費」として認め、追加した。一部議員の要望がきっかけで、関係者からは「透明性の後退では」との指摘も。名張市民の皆さん、この日常の旅費ってスッキリします!?

 日常の旅費が含まれているのは、使途項目の「その他経費」。上限は1人月5千円。事前の議長決済や報告書も不要で、個人情報を含むケースもあるとし、昨年度分は調査事項などを記入する計算書が情報公開請求の対象外になっている。

 日常の旅費を請求したのは4会派の12人で、請求額は計63万円だった。内訳は心風会(5人)と公明党(4人)は全員。清風クラブ(5人)は1人、清流クラブ(3人)は2人で、同会派でも請求するかどうかの判断が議員によって分かれた。

賛成派は「歓迎」 慎重派は「静観」

 賛成派の議員は「これまで手続きが煩雑で時間がかかって請求しなかったが、活動の充実につながる」と歓迎ムードだ。一方、慎重派は「説明責任が果たせない」と懐疑的。昨年度分は静観を決めた議員もいる。

 そもそも、同市議会の「その他経費」には、私的利用かどうか客観的に判断できないものが他にも含まれている。12年度分の収支報告では、議員1人当たりの年額が48万円なのに対し、日常の旅費と自宅や携帯の電話代(上限5千円)、インターネット利用料の3点で計約21万6千円を占める議員がいた。

 県内他市の議会にも取材したが、日常の旅費を認めている例は他になかった。電話代も名張市では08年度からOKにしており、日本共産党(2人)以外の18人が利用している。しかし、他市では日常の旅費と同様、どこも電話代を認めていないのが現状だ。

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