欧州・ハンガリー〈後編〉
本紙ライター・坪田多佳子
海外でも展開するピンクリボン運動。他国の人たちと話すと、日本とは違った事情も垣間見え、考え方のヒントになることにも出会う。前回に続き、アイーダ・シルブさん=写真円内=との会話から興味深い話を紹介する。A=アイーダさん、T=私(坪田)。
T 前回、ハンガリーの乳がん検診受診率は低いという話をしたよね。理由は何だろう。検診費が高いの?
A 対象者は無料よ。
T タダなのに受けないわけ?
A 医療システムの問題じゃないかな。例えば私の街の話だけど、待ち時間がどれだけ長いか! 予約も取りにくいし。病院に行きたくないから、検診にまで気が回らないんだと思う。
T ということは、費用より受けやすさか……。ピンクリボン運動はどう?
A 大都市以外ではあまり聞かない。でもこの前、テレビでピンクリボンのCMを見たなあ。
T どんなの?
A 外国語だったからよその国のCMだったみたい。短いメッセージだけのもの。でも、ああいうCMだけでも女性がくつろぐ時間帯に流せば効果あるだろうなって思った。ここでは啓発自体盛んじゃなくて、話題にならないから。
T 乳がんについて無関心ってこと?
A そう。それに人は一つ心配があるとそればかり考えるでしょ。今の関心事は難民問題かな。他は見えない。ハンガリー人って皆同じ方向を見ているような気がする。
T それはどこでも同じ。話題になれば情報があふれるのも。
A だから情報は、信用のあるものを選ばないとね。乳がんの情報は医療に関するものなんだし。
◇◇◇
受けやすい仕組みづくり、効果的な啓発。ハンガリーの話を聞きながら、私は「そのまま日本にも当てはまりそう……」と考えていた。
アイーダ・シルブさん(54) 元医師、通訳・翻訳者、英語講師。ハンガリー在住。趣味の合気道の稽古のため、昨年9月に来日し、松阪に滞在。
「伊賀タウン情報YOU 2016年2月前半(669)号」より