乳がん検診の大切さ訴える ピンクリボンサポート女性の25人に1人が乳がんに…。乳がんの早期発見、早期治療を呼びかける企画です。

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連載5年「検診受けて」に込めた思い

 10月は乳がん月間。2008年に深山なお子、加藤真理両記者とともにピンクリボンサポートの連載を始めてから5回目の、特別な月を迎えた。ピンクリボン運動が全国展開される今月、聞こえてくるのが「検診を受けて」の言葉。紙面でも繰り返し書き続けてきたが、私自身、これには特別の思いがある。(ライター・坪田多佳子)

 10年ほど前のこと、友人が突然「乳がんなの」と告げた。彼女は、しこりが大きくなって初めて病院へ行ったことやそれまでの経過を説明し、「乳がん検診について何も知らなかった」と悔しさをにじませた。そして最後に言った。「あなたは絶対に乳がん検診を受けてね。絶対に、よ」。
 小学生だった子どもを残して友人が亡くなってから、彼女の言葉を何度も思い起こした。それまでに自分が受けた検診は、エコーとマンモグラフィともに1回だけ。定期的な検診が必要な理由などまったく分かっていなかった。その後、乳がんの記事を書くことになり、乳がん体験者の方々や、医師、看護師、技師、啓発活動に携わる方々などの話を聞き、少しずつ知識を深めた。そこで知り得たことを書きながら、いつも「乳がん検診について知らなかった」との彼女の言葉を考える。だからこそ伝えたいと思い、伝える方法を探している。一方で、受診率がなかなか上がらない現状を前に、伝えきれないもどかしさも感じている。

身近な人の言葉

 今年の夏、がんは人ごとではないと感じる出来事があった。30年ぶりの同窓会での近況報告で、50人ほどの女性のうち3人が、乳がんを含め、がんを患っていると話した。その中の一人が「がん検診については知られていないことが多い」と言った。「がんになって分かったことを友人たちに伝えている」とも。
 彼女の言葉は重く、友人たちの間で検診についての関心が高まり、受診した人たちもいると聞いた。検診は重要、という知識にとどめず、実際に検診を受ける行為につなげてこそ意味がある。身近な人の言葉には力があることを実感した。
 日本の乳がん検診受診率は3割に満たないが、欧米では8割近い数字が出ているという。先月、米国留学中の娘を訪ねた際、留学 先の大学に縁のある米国、オーストラリア、アフリカの同年代の女性たちと話をする機会があった。その中で乳がん検診が話題になると、オーストラリアの女性は「マンモグラフィ検診は受けなければいけないもの。だから強制的に受けさせられる感じもする」、米国人女性は「受けない人のほうが少ないと思う」とコメント。私が日本の受診率を告げると一様に驚かれた。

確実に「伝える」方法

 しかし、アフリカ出身の女性は「私は受けたことはあるけれど、それが何年前かも覚えていない」と言った。アフリカで人権活動をしている女性だが、自分のことは二の次になっているようだ。私はすぐに検診を受けて欲しいと彼女に伝え、亡き友人の言葉であることも言い添えた。他の女性たちも「あなたの仕事を考えてみて。周りの人を守るにしても、まず自分の身体を守らなければ」と言い、「乳がん検診を受けるのは当たり前のこと」と強調。話に耳を傾けていたアフリカの女性が「確かにその通りだわ」とうなずくと、米国人女性が「さあ、彼女が検診を受けられる所を探すわよ」とインターネット検索を開始。医療機関の所在地
と、電話番号のメモを差し出した。確実に「伝える」方法は、そういったところにあるのかもしれない。
  繰り返し叫ばれる「検診を受けて」の言葉。単なるスローガンに終わらせないためにも、伝えることの意味を常に問い直したい。検診を受けるのは当たり前―そうした環境になるまでは、身近なところでも機会を捉え、この言葉を発していこうと思う。

伊賀タウン情報YOU 2012年10月後半(590)号」より

   
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