【日光東照宮への出品作「日本の美」を手にする稲本さん(提供写真)】
小さな布を折り重ね、花鳥風月を表現する日本の伝統工芸「つまみ細工」。かんざしなどに使われることが一般的だが、三重県名張市に住む工芸家・稲本麻里さんが手掛けるのは、幾何学模様に並べた花飾りが1枚の絵のように広がる「つまみ細工絵画」だ。
7歳で水彩画、10歳から油絵を学ぶなど、幼少期から創作を続けてきた稲本さん。6年ほど前、つまみ細工のかんざしに魅了され、独学で技術を高めていった。2018年からは「油絵で描いてきた幾何学模様を表現しよう」と、幾何学模様をモチーフにしたつまみ細工絵画を考案した。
制作は、着物などに使われる正絹羽二重を染色するところから始める。正方形に切った布を折り紙のように折って形を作り、製図したオリジナルの幾何学模様の上にのりで固定。デザインを考えるだけでも2、3か月は必要だそうで、構想から1年以上掛けるものもある。作品はすべて「日本の和」がテーマで、「見る角度によって作品の表情が変わる」と稲本さん。
これまでイギリスやニューヨークなど国内外で出展し、日本芸術アカデミー大賞など多数を受賞している。世界遺産の日光東照宮(栃木県)からも推薦を受け、同神社で11月5日から9日午前10時から午後4時に開かれる「徳川家康公生誕480年記念 日光東照宮美術展覧会『芸術の虎展』」で展示予定。F15サイズの「日本の美」は、四季折々の花や夫婦鶴を表現した大作。芸術作品を奉納し、平和へ貢献した作家を讃える「康寧作家之証」にも認定された。
魅力広げる教室
地域の公共施設などで教室を開催するなど、魅力を広げる活動にも熱心な稲本さん。「日本の美しさや和の心を感じる作品で、多くの人を元気づけたい」と思いを語った。
稲本さんが代表を務める「一般社団法人つまみ細工アート幾何学協会」のホームページ(https://tsumamizaikuart.com)で活動を紹介している他、問い合わせもできる。
2022年11月5日付831号2面から